リーマン・ショック前と今で、異なるところ
当時と今を、もう少し、詳しく、比較してみましょう。
【1】金融危機の予兆は、まだ現れていない
2008年、リーマン・ショック前には、北米の住宅ローン問題が深刻化しつつありました。金融危機の予兆がはっきりと出ていました。現時点で、それに匹敵する予兆はありません。低金利を背景に、世界中で低信用ローンの残高が拡大していることを不安視する向きはありますが、現時点で焦げ付きが急増しているわけではありません。
低金利を背景とした世界的な債務膨張は、今後継続的にウォッチしていく必要がある問題ですが、ただちに深刻な問題を引き起こす状況ではありません。
【2】資源価格は低水準、インフレも世界的に落ち着いている
リーマン・ショック前、資源価格の急騰と、世界的な「インフレ高進」が不安材料となっていました。現在、原油価格は、当時の半分以下です。資源価格は総じて低迷しており、世界的にインフレは落ち着いています。
今の世界景気には、資源安メリットが、幅広く及んでいます。
【3】第4次産業革命が進行中である
現在、世界で第4次産業革命が進行中です。AI(人工知能)、IOT(モノのインターネット化)、ビッグデータ分析、ロボットを活用した、技術革新が進んでいます。来年にかけて、5G(第5世代移動体通信)の普及が始まれば、その流れは加速すると考えられます。
米中対立が、5Gの普及などにブレーキとなっていますが、それでも第4次産業革命の流れを止めることはできないと考えています。米中対立でやや遅れは出ていますが、それでも来年には5Gへの投資が拡大すると考えています。
【4】世界の政治情勢は、当時よりも不安定化している
政治情勢は、当時よりも、今の方が不安定です。米中貿易戦争・ハイテク戦争が激化しつつあります。米中の覇権争いは、20世紀の米ソ冷戦に匹敵する長い対立になる懸念が出てきました。
英国でブレグジット(英国のEU離脱)実現を最優先の課題とするボリス・ジョンソン首相が誕生し、「合意なき離脱」(英国が離脱条件についてEUと合意しないまま離脱)のリスクも出てきています。そうなると、英国・EUの間の経済関係が突然途切れ、英国・EUともに深刻なダメージを受ける可能性があります。
また、日韓の対立が深刻化し、両国が経済的ダメージを受ける懸念も出ています。
【5】日本株が、さまざまな株価指標で見て「割安」になっている
日本株の投資価値は、リーマン・ショック直前よりも今の方が、はるかに高いと判断しています。日本企業の財務内容・収益基盤・ビジネスモデルとも、改善しているからです。
日本株のPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)といったバリュエーションが低下し、予想配当利回りが高くなってきていることも、日本株の投資魅力を高めています。年間6兆円あまりの自社株買いが出るなど、財務内容が良くなった日本企業が株主への利益配分を強化しつつあることも、追い風です。