今後のシナリオ想定する上での留意点は?
相場はまだまだ荒れそうな気配ですが、今回の一連の出来事と相場の動きから今後のシナリオを想定する上での留意点が見えてきました。
1:パウエル議長は、景気拡大の不確実性要因として、「世界経済の減速、貿易摩擦、低インフレ」を挙げ、これらの要因の不確実性が高まると、利下げ期待が高まることが確認された。今回は、「貿易摩擦」への不確実性が一気に高まったが、他の要因にも注意する必要がある。世界経済の更なる減速や、インフレの伸び悩み、もしくはさらなる低下が続けば、利下げ期待が高まることが予想される
2:今回の課税は10%だが、幅広い消費財にかかるため、米国経済の個人消費に影響し、景気が腰折れするリスクが予想される。米国景気減速も利下げ期待が高まる要因となる。
ただ、在庫が積み上がっていることや既に中国から出荷した製品があるためクリスマス商戦への影響は少ないとの見方もある
3:米中貿易摩擦が激化したが、米中通商協議は続くとのことであり、合意に進展が見られれば、これまでの巻き戻しが起こるリスクにも留意しておく必要がある。合意進展→FRBの利下げ期待後退→米長期金利上昇→ドル高へのリスクである
4:人民元の動向を注視していく必要がある。中国は追加関税の対抗策として引き続き元安誘導をしてくる可能性が想定される、人民元の基準値が元安方向に設定されれば、円高が進む可能性があり注意したい。ただ、中国側にも資本流出や外貨準備の急減などのリスクと背中合わせであり、元安誘導も緩やかなことが予想される
出遅れた日銀
日銀がほっとしたのも、たった1日で終わりました。FOMCの前日に開催された日銀の金融政策決定会合は様子見姿勢をとり、ドル/円も109円台に上昇したことから成功したように思われましたが、今回の一連の出来事と急激な円高によって、次の一手を温存したつもりが、出遅れ感が一気に高まりました。
8月は日銀金融政策決定会合がないため、その間にさらに円高が進行しても様子見しかありません。9月に日銀が追加緩和を実行してもFRBも追加緩和の可能性があり、ドル/円の戻りは鈍いことが予想されます。しかも、9月はFRBの方が日銀よりも早く開催されるため、効果は限定的になるかもしれません。
今週9日(金)に日本の4-6月期GDP(国内総生産)が公表されます。
民間の予想では前期の実質年率+2.2%から+0.5%に減速するとの予想です。中にはマイナス予想もあります。減速する日本経済にとって米中対立激化はさらに追い討ちをかけることになりそうです。株安から円高に弾みをつけることになる可能性もあり注意が必要です。