中国への為替操作国指定は米中対立激化の象徴
8月5日:人民元安と為替操作国指定で円高
今週に入って事態はさらに深刻になりました。
追加関税の発表によって中国景気の減速懸念が高まり、5日(月)の人民元が1ドル=7元を突破。対ドルで11年ぶりの安値を更新しました。
この人民元安を受けて、米国財務省は中国を「為替操作国」に指定。1994年以来(クリントン政権)25年ぶりの指定となります。
為替操作国に指定すると、米国は今後、IMF(国際通貨基金)を通じて、中国に対して是正を求めます。中国が是正に応じなかった場合、追加関税などの制裁措置を講じる可能性があります。
しかし、既に2国間協議や追加関税などは実施しているため、為替操作国の指定そのものは意味をなさないのですが、5月に発表した為替報告書で指定を見送ったばかりなのに、今回、異例のタイミングで指定に踏み切ったことから、米中対立激化を象徴する出来事と捉えられ、一気に懸念が高まりました。
5日(月)の米国NYダウは、一時960ドルを超える下げ幅となりました。ドル/円も105円台へと円高が進みました。
8月6日:人民元基準値設定で円安
6日(火)のドル/円は、米中対立激化懸念から早朝に105円台半ばまで円高が進みましたが、中国人民銀行が6日の人民元の基準値を1ドル=6.9683元(※)と7元を下回る水準に設定したことから市場は好感。日経平均株価はマイナス幅を縮小し、ドル/円も反発しました。早朝の105円台半ばから107円台まで反発しました。
(※)前日比0.0458元の元安・ドル高水準で設定。基準値としては2008年5月以来、約11年ぶりの元安水準。しかし、基準値が7元を下回ったことから市場に安心感が広がった。
ところで、トランプ大統領が、あのタイミングで追加関税の発表をしたことは予想外の出来事でしたが、これを受けて玉突き的に予想外の出来事が次々と起こりました。
・パウエルFRB議長の発言
・トランプ大統領はこの発言に不満を示し、さらなる利下げを促すように対中追加関税を発表
・中国は否定しているが、対抗策としての元安誘導
・米国が中国を為替操作国として指定
・中国が人民元基準値を7元以下に設定
つまり、上記の一連の出来事によって、ドル/円は4円弱円高が進み、105円台半ばまで下落しました。人民元基準値の7元以下の設定によって株も為替も反発しました。とりあえず先週来の円高はいったん止まっていますが、ドル/円は106円台前半まで再び下落しており、頭の重たい動きとなっています。