「その他消費支出」の本当の正体は?

 それには3つ理由があると思います。

1.総務省の家計調査に回答したとはいえ、一般家庭は家計をそんなに細かく把握していないこと。家計簿をきちんとつけている家庭はそんなに多くなく、正確性には多少欠けている側面も否定はできない。
2.この資料では見ることができない奥さまなどのパートナーが正規・あるいはパートで別途収入がある可能性。
3.「その他消費支出17.3%」の存在。

 実はこのその他消費支出17.3%+住居5.0%から住居費として支出している可能性があるように思われます。3のその他の中には交際費と仕送り金が含まれていますが、この54,528円と先ほどの住居5.0%の15,760円を足すと70,288円になります。

 つまり、交際費を削減し、貯蓄もままならない家庭が多いということが予想できます。

 70,288円という金額が住居費用としては高いか低いかという議論もありますが、それだけ家計が苦しいと推測できます。

 住居5.0%とその他消費支出17.3%を足したら22.3%で、確かに定石であるローン返済額は手取り年収の20〜25%以内ならひとまず安心であるという範囲内に入り、一見「ギリギリ正論か?」とも思ってしまいそうです。

 しかし、せめて20%は切らないとこのパーセンテージではかつかつの生活で余裕がなさ過ぎると思ったので、以上のことについて某銀行本店の融資部調査役の方に匿名を条件にインタビューしてみました。

 そしたら驚きの回答を得ました。

年収500万円でも住宅ローンの支払いを続けるのは難しい

 彼が言うには、「銀行としてはたしかに税引き前の年収の30%程度を目安とした返済負担率(元金+利息)を基準としています。もしくは借入限度額として税引前の年収の5〜6倍までは貸し出します。

 しかし、現実的な話として私は返済額は税引き前の年収の10%くらい、借入限度額としても税引前の年収の3倍までが限界だと思います。

 それに加えて返済額と同額に近い金額を住宅に関するメンテナンスや繰り上げ返済、その他諸経費など住宅に関する費用専用に貯蓄ができることが最低条件だと思います。」

 と言うのです。

 さらに彼は、「貸してくれと言われれば、基準を満たしていればお貸しします。しかし、内心では“そんなに限度いっぱいに借りない方がいいのに……”とは思います。

 でもそこで私が変に借入額を下げるようなアドバイスをやり過ぎると、お客様が住宅購入自体をしないという判断をされてしまうこともあるでしょう。そうなっては不動産会社さんとの兼ね合いもありますんで……。」

 なるほど、たしかに仏心を出し過ぎたアドバイスをすれば住宅購入をやめてしまう人もいるかもしれません。

 せっかく売れそうな物件の契約がなしになってしまうと不動産会社からクレームを言われることもあるでしょう。

「本質的に重要なのは貸す側の視点として“ぎりぎり返せるか”や“借りられるか”ではなく、“払えるか”を考えていただきたいと思います。住宅を購入した場合の固定資産税や管理費、修繕費、光熱費も含めてその他生活水準に応じた出費も勘案していただきたいですね。

 住宅ローンをお考えのお客様に感じることは、購入後にかかる諸費用をきちんと考えている人があまりにも少なく、住宅を買ってはいけない人が買っている状況があまりにも多過ぎます。あなたは住宅を購入後、やりたいことやほしいものがあっても家族全員でがまんするんですね?と思ってしまいます。何のための住宅なんですか?と言いたくなるほどです。

 年収500万円くらいでの住宅購入は、物件にもよりますが相当きついと思いますよ。

 これが朝から晩まで一日中融資調査をしている銀行の融資部調査役の口からでた本音です。

 次回(来月)のコラム、年収500万円なら住宅購入しないほうがいいpart.2では私のインタビューに対して何の資料も見ずに具体的な数字を語ったこの融資部調査役が単純な思いつきや感覚でこれらの数字を言っているのではないことを検証してみたいと思います。

 

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(末永健)

 ※この記事は2018年6月19日にマネラボサイトで公開されたものです。

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