6月米国雇用統計のレビュー

過去3ヵ月の推移と今回の予想値 

  4月 5月 6月 7月
(予想)
非農業部門雇用者 22.4万人 7.2万人 22.4万人 17.0万人
失業率 3.6% 3.6% 3.7% 3.7%
平均時給(前月比) +0.2% +0.3% +0.2% +0.2%
平均時給(前年比) +3.2% → +3.1% +3.1% +3.2%
※矢印は、前月からの変化

雇用統計強いのに、なぜ利下げ?

 6月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が+22.4万人の増加で市場予想の+16.5万人を大きく上回る強い結果となりました。失業率は3.7%に0.1ポイント上昇しましたが、これは求職者が増えたことが理由で、雇用市場にとっては歓迎すべき傾向といえます。失業率が歴史的低水準にあることも変わりありません。平均時給は、前月比+0.2%、前年比+3.1%。全体として米労働市場は健全であり、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げが必要となるような箇所は全く見当たりませんでした。

 しかし、パウエルFRB議長は、雇用統計発表の1週間後に行われた議会証言の場で「6月の雇用統計の結果は、FRBの経済評価(利下げ方針)を変えることはなかった」と述べています。

 パウエル議長は、雇用統計が弱い、と言っているわけではありません。むしろ強いと認めています。強いのにインフレ期待が改善しないことが問題なのです。セオリーからすれば、失業率が半世紀ぶりの水準まで下がっているのだから、消費が拡大してインフレ率がもっと上昇していいはずなのに、実際はそうでもない。だから利下げしたのです。