同じような家庭状況でも、定年退職の前後でお金に余裕がある人とない人がいます。収入は変わらないのに、定年退職までの現役期の過ごし方によって大きな差が生まれているのです。まったく余裕のない老後の方もいれば、会社勤めの方で特に投資をしていなくても1億円以上の資産を築いている方もいます。

 老後も困らないぐらいお金が貯まっている人が、現役時に給与が高いか? というと必ずしもそうではありません。高所得である人でも生活水準が高いため、収支で考えると思ったほど貯蓄がない人も多いのです。いわゆる「高収入貧乏」といわれる人たちです。

 収入を上げることは誰にでもできるわけではありません。年収が多くなくても資産を築いた人を参考に、資産形成の方法を考えていきます。

どうやって資産形成をしたらいいのか?

 2017年時点で、日本には「富裕層」と分類される世帯(純金融資産1億円以上5億円未満保有世帯)が118.3万世帯、準富裕層(純金融資産5,000万円以上1億円未満保有世帯)が322.2万世帯と推計されています。これは不動産などの実物資産は除いている数値なので、総保有資産としてはさらに多いことが想定できます(参考:野村総合研究所2018年12月18日)。

 老後2,000万円問題の発端となった金融庁の「高齢社会における資産形成・管理」によれば、老後の必要資金は2,000万円以上と言われています。比較すると準富裕層以上の世帯であれば将来もお金の不安がなく、余裕のある生活を過ごせると考えて良さそうです。

 では5,000万円以上の金融資産を持っている準富裕層と呼ばれる世帯は、もともと資産を持っている人なのでしょうか? 会社勤めの人が、余裕のある生活ができるほどの資産を築くことは難しいのでしょうか?

 平成29年における会社員の平均年収は男性が531万円、女性が287万円※となっているので、計算上は、夫婦共働き世帯であれば平均世帯年収は818万円(額面)と想定されます。それに対して、平均的な二人以上世帯家計の支出は345万円となっています。
※出所:国税庁が毎年実施する「民間給与実態統計調査(源泉徴収義務者、民間の事務所に限る)」統計局ホームページ/家計調査年報2018年より

 もちろん各家庭によって、結婚費用にどこまでかけるのか、住宅も購入するのか賃貸なのか、子どもの教育費をどの程度かけるのか、生活水準がどの程度の水準かによって事情が異なります。夫婦共働きでも出産時の産休・育休制度があるのかないのか、いつから復職するのかによっても変わります。退職金のあるなしでも大きく貯蓄はかわるでしょう。

 仮に、老後2000万円貯めるという目標をたてるのであれば、将来からの逆算をしながら普段の生活を考え、自分の所得に見合った水準で生活をしていくことが必要です。実際に会社勤めや公務員だった方でも準富裕層や富裕層といわれる資産を築いている方と面談すると、現状と将来のお金について収入と支出をしっかり考えている方が多いことが分かります。