先週、TV番組でイアン・ブレマー氏のインタビューが放映されていました。イアン・ブレマー氏は政治リスクを専門とする米国のコンサルティング会社ユーラシア・グループの代表です。ユーラシアグループは、毎年年初に「世界の10大リスク」(下表)を発表しています。このコラムでも毎年1月に紹介していますが、インタビューでは10大リスクの現時点の状況と新しいリスクについて触れていましたので紹介したいと思います。
ユーラシアグループ
「2019年世界10大リスク」
- 悪い種(Bad Seeds)
- 米中関係
- 激化するサイバー戦争
- 欧州のポピュリズム
- 米国の内政
- イノベーションの冬
- 意思なき連合
- メキシコ
- ウクライナとロシアの対立激化
- ナイジェリア
このインタビューで、「世界の10大リスク」の第1位の「悪い種」(※)について、現状ではどう思うかとの質問に対し、イアン・ブレマー氏は「地政学的な危機はまだない。ただ、種が根を張り、緊張やリスクが世界中至るところで育っているのを感じる」と説明しています。
そして、米国とイランの軍事衝突の可能性については、「トランプ米大統領は物事を実際よりもドラマチックに言いがちだが、『10大リスク』を書いた1月よりも軍事衝突の可能性が高まっているのは確かだ。可能性が何%かということは言えないが、少なくとも私がユーラシア・グループを設立した1998年からみて今が最も危険な状態だ」と述べています。
(※)「悪い種」…欧米政治の混乱やポピュリズムの台頭、主要国の同盟の弱体化など世界に重大な結果をもたらしかねない兆候のこと。イアン・ブレマー氏はさまざまな兆候があるのに次に来る危機へのリスクに備えができていないことを指摘し、「2019年はそれが重大な問題となる。」と警鐘を鳴らしている。
第2位の「米中関係」についてインタビューでは次のように述べています。 「ファーウェイについては米政府も国防総省も諜報機関も、米議会の両党も深刻な問題だと考えており強硬に対応したいと思っている。なかなか一枚岩になることがない米国が団結しているので中国が望む形での解決は難しいのではないか」と、すぐには解決しないと述べています。
また、「トランプ大統領は全ての対中貿易製品に関税を掛けると思うか?」との質問に対して、「消費者に直接影響を与えるため掛けないと思う。トランプ大統領は国民がクリスマスにおもちゃやiPhoneが買えない姿を見たくないだろう」と楽観的な見方を示しています。
さらにイアン・ブレマー氏は関税を引き下げる可能性もあると見ています。その時期については、「関税を引き下げるとしたら今すぐではなく来年だろう。トランプ大統領にとって安全保障や方針は重要ではなく、自分が大統領として再選されることが重要である。そのため関税引き下げは大統領選に向けて勢いをつけることが狙いだ」と予測しています。