政治的な駆け引きの末、EUのトップ人事決まる
EU(欧州連合)は今、トップの人選を行っています。これは極めて政治的な駆け引きであり、密室での交渉が延々と行われることで知られています。しかし、どうやら人事は固まりました。
まず最も重要なポストである欧州委員会委員長には、ドイツ国防相のウルズラ・ゲルトルート・フォンデアライエン氏が内定。
そして2番目に重要なポストであるECB(欧州中央銀行)総裁にはフランスのクリスティーヌ・ラガルド氏が内定しました。
暗黙の了解でこれらの二つのポストを一つの国が占めることはできないので、欧州委員長にフォンデアライエン氏が決まった時点で、ドイツ連邦銀行総裁イエンス・ヴァイトマン氏がECB総裁に推挙される可能性は断たれたというわけです。
ラガルド氏の経歴
ラガルド氏は法律事務所ベーカー&マッケンジー会長、フランソワ・フィヨン内閣での経済財政産業相を務めた後、2011年からIMF(国際通貨基金)総裁を務めています。ECB初の女性総裁が誕生することになります。
彼女は経済学者ではないし、中央銀行の経験もありません。このため経験不足を不安視する声もある一方、ギリシャ危機で揺れる欧州をIMF総裁の立場からガッチリと盛り立てたリーダーシップには定評があります。つまり今回の人事は今後ECBの運営が、一層政治色を帯びることを示唆していると言えます。
ラガルド次期ECB総裁の課題
ラガルド氏はマリオ・ドラギECB総裁の緩和的な金利政策をそのまま引き継ぐと予想されます。市場関係者の中にはドラギ氏よりラガルド氏の方が一層緩和的なスタンスを取るのではないかと見る向きもあります。
事実、このニュースが発表されたとき南欧諸国の債券利回りとドイツの債券利回りのスプレッドは縮小。現在のドイツの10年債利回りは▲0.382%、イタリアは1.606%、スペインは0.225%です。
その反面、「ドラギにできなかったことがラガルドにできるのか?」という懐疑論も聞こえてきます。ECBの量的緩和政策や金利政策は、やや使い古された印象があり、景気浮揚効果が薄れてきている感は否めません。