「運用しながら使う」なら、資産の目減りも抑えられる

 では、具体的にどのように運用を始めればいいでしょうか。私は、60~75歳を「運用しながら、使う時代」を作るのが良いと考えています。「使う」だけでは資産は減る一方ですが、「運用しながら使う」となると、その差額が減っていく計算となります。

 仮に、退職する60歳の時点で3,000万円の資産があるとして、年間4%、生活費を引き出すとします。資金を運用した場合の収益を年率3%と想定します。うんと高い収益率を求めて高いリスクを背負う必要はありません。この場合、資産が減少する割合はマイナス1%。この割合で資産が減少すると、15年後には約2,580万円が残ります(税金・手数料を考慮せず、年間1%ずつ減っていく試算)。

 

 あまり減っていないと感じていただけるでしょうか。引き出し率は生活レベルによって異なるので、引き出し率と運用収益率のバランスをとることが、とても大事になります。

 今は、1人につき、投資元本120万円までで、その運用益や配当金が5年間非課税になる制度「NISA」があります。手続きが面倒などと思わず、積極的に利用したい制度です。

 投資を考える際、よく陥りがちなのは、「3,000万円まとまった資金があるから、今すぐ、一度に、全額を運用する」という考え方です。しかし、多少の手間はかかりますが、ぜひ「時間を分散する」ことを考えてほしいのです。

 3,000万円すべてを一気に投資に回すのではなく、一部をまずNISAで運用する。さらに、NISA枠上限の120万円を毎月●●万円ずつの毎月の積み立て投資にする、などして、タイミングや時間を分散し、リスクを排除することが大事です。