3.株主優待、株主平等原則絡みの裁判例
今まで、株主優待の適法性が正面から争われた事件はありませんが、株主平等原則、取締役の責任との関係で参考になる裁判例があります。
(1)最高裁:昭和45年11月24日判決
これは、ある会社が一般株主との関係で利益配当なし(いわゆる利回り0%)としておきながら、特定の大株主に対しては、利益配当に相当する一定の金額を贈与する旨の贈与契約を締結したという事件です。
裁判所は、この贈与契約が特定の株主のみを有利に取り扱うものであるとして、株主平等原則に違反するため無効であると判断したのです。
一般株主と特定の大株主において、利益配当について不合理な差別をすることは許されないのです。
(2)高松高裁:平成2年4月11日判決
株主優待として、優待乗車券を交付している会社が特定の株主に対して、交付基準を超過する数の優待乗車券を交付したことが問題になった事件です。
裁判所は、善管注意義務違反があったとして、代表取締役に損害賠償責任を認めました。会社として、特定の株主とそれ以外の株主とで不合理な差別をすることになるため、株主平等原則に違反し違法ということになります。