倉庫がなくても「当日入荷、当日販売」ができる
次にフーマーのバリューチェーン構造を見ていきましょう。フーマーのバリューチェーンは①商品調達、②商品の入荷、③顧客による検討、④顧客による購入、⑤決済、⑥店頭での調理、⑦配達、⑧購入後のアフターサービス、という8つの要素に分けて考えることができます。
このバリューチェーンとフーマーの事業レイヤー構造を合わせると、フーマーが実現している「新しい小売り」のビジネスの全貌が見えてきます。
商品調達の段階では、アリババブロックチェーンによりすべての商品においてトレーサビリティーを確保し、生産者のデータを蓄積できます。
入荷する商品は、フーマーのオンライン注文とリアル店舗でのアリペイを使った決済データによりすべての購入データが収集されていますから、それぞれの店舗ごとにコントロールが可能です。フーマーが在庫を置く倉庫をいっさい持たず、「当日入荷、当日販売」を徹底できるのはこのためです。
顧客が商品を検討するときはスマホのアプリで商品情報を見ます。オンラインでは検索データが残りますから、これも顧客のニーズ分析に活用できます。
店舗から3キロメートル以内なら30分以内で無料配達
顧客が購入するときは、繰り返しになりますが、ほぼすべての購入データの取得が可能です。「誰が、いつ、何を」買ったかをすべて正確に記録・分析できるのですから、その意義は従来のPOSデータとは比較になりません。
顧客が店頭での調理を希望すれば、フーマーはその嗜好データも取得しているはずです。こうしたデータはどのように商品を入荷すべきかをより精緻に予測するのに活用できているでしょう。
配達においては、店舗から3キロメートル以内なら30分以内で無料配達する配送網を構築しています。これも配送データの蓄積が可能ですから、今後アリババグループが「ラストワンマイル」の制覇という課題に対してより有効な打ち手を見出していくのに役立つのではないでしょうか。
これらすべての流れが実現しているのは、顧客一人ひとりとの関係性を継続的なものにする「CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」です。