しかし、人口ボーナス期の数字は絶対ではない

 前回の労働人口の伸び率、今回の人口ボーナスのどちらの観点で見ても、日本の数字は極めて悪いと言えます。このままでは、経済は極めて低成長となり、その状況が長く続くという声もよく聞こえてきます。

 しかし、この人口ボーナスの数字は絶対ではありません。条件次第で、数字が変わることが考えられます。例えば、同じように人口動態が良くない欧州諸国は、以前から移民受け入れの制度がありましたが、日本には正式な移民制度はありませんでした。しかし、日本政府は、実質的に移民受け入れに大きく舵を切っており、今後の受け入れの状況次第では、労働人口の増加率や労働人口/従属人口の数値が改善する可能性があります。また労働者の定義は、15歳から64歳の人口ですが、70歳までを労働者とカウントすれば、労働人口の増加につながり、指標は改善します。

 とはいえ、新興国のインドやアフリカ諸国のように圧倒的に人口動態が良好な国のほうが、人口動態の観点では、ストレートに今後長期的に高い経済成長を期待できる有望株といえます。

 なお、人口動態の推移から対象国の長期的な経済成長を考え、投資を検討する場合は、大きなトレンドを捉えることが重要です。人口動態は良好でも、景気のサイクルによる経済成長率のアップダウンはあるからです。従って、10年はおろか、20年、30年といった長いスパンで投資を考えなければならないことに、ご留意ください。

 人口動態は、企業収益や景気動向、株価のバリュエーションのような一般的に投資判断で使う指標ではありませんが、例えば、現在進行している米中の覇権争いにおいても、どちらが今後繁栄するかに影響する大変重要なファクターです。繁栄する国に資金は流入し、株式市場は上昇しますので、長期的な大きな資金の流れを捉えるために、人口動態を参考にしていただければと思います。