長期的な影響は?

 さて、中国はこのことで、今後は米国企業に頼らず、独自の技術を育んでゆくことが予想されます。

 これは険しい道のりであり、ファーウェイをはじめとする中国のメーカーは最初の数年間は国産への切り替えに伴い、性能の劣化、納期が延びる、マージンの低下などの悪影響が予想されます。

 その半面、国内業者を政府が強力に後押しするとなれば、これは中国のハイテク企業にとって、むしろ良い展開になる可能性もあります。

スプートニク・ショックの教訓

 実際、1957年にソ連のスプートニク号の打ち上げが成功したとき、宇宙競争でソ連が米国をリードし、米国が核攻撃の脅威にさらされるという懸念から、米国政府は1958年の予算案でハイテク分野に莫大な研究開発費を振り当てました。

 株式市場はこれに反応し、会社名の末尾に「トロン」「ニクス」「エレクトロ」などが付く銘柄が、軒並み暴騰したのです。同様のことが中国株で起こっても不思議ではありません。

 とりわけ、中国が力を入れて開発しなければいけない分野としては、RF(無線周波数)半導体、ファウンドリ(半導体製造工場)などの強化です。

 アプライド・マテリアルズ(AMAT)、ラムリサーチ(LRCX)、KLA(KLAC)などの米国の半導体製造装置企業は、中国と商売することがはばかられるため、中核的な技術を提供しない可能性もあります。

人材面の影響は?

 人材の面では、米国半導体企業が外国人を採用するにあたり、政府から要求される、いわゆる「みなし輸出許可(deemed export license)」下での採用承認が、だんだんと取得しにくくなっています。つまり国家安全保障に関わる重要な先端技術を外国に盗まれたくないという心理が働いているわけです。

 商務省は「みなし輸出許可」の申請が来ると、自らのみならず、国務省、国防省、エネルギー省とも協力して審査しています。この作業が以前は数週間で完了していたのですが、今は8カ月ほどに延びています。

 米国の大学にはたくさんの中国の留学生が学んでおり、彼らの中にはハイテク企業に就職を希望している人もいます。しかし米国の大学は、中国のスポンサーからの寄付を拒否するケースが増えています。

 つまり産学ともに「中国離れ」の風潮が出てきているのです。

 こうした風潮が強まると、シリコンバレーで働いている中国人エンジニアの祖国への帰国という形で、米国から頭脳流出が加速する可能性もあります。