SNSで押さえた強大な顧客接点がテンセント最大の強み

 テンセントのビジネスの起点、そして中核は、もちろんSNSサービスです。MAU(月間アクティブユーザー)は、2018年12月末時点で「QQ」が約15億人、「ウィーチャット」が約11億人とされています。

 MAUが20億人を超えるフェイスブックに迫るほどの圧倒的なユーザー基盤、この顧客接点こそがテンセントの最大の強み。テンセントは、SNSで獲得したユーザーに対し、ゲームやデジタルコンテンツ、金融サービス、小売りサービスなどを提供していくことによって「テクノロジーの総合百貨店」になるわけです。

収益の柱「オンラインゲーム」には懸念材料も

 収益の内訳では、テンセントの事業の中で存在感が大きいのはやはり「オンラインゲーム」と「デジタルコンテンツ」です。ゲーム内課金や有料コンテンツなどからのVAS(Value Added Service、付加価値サービス)収入は全売上高の6割近くを占め、収益の柱となっています。テンセントをよく知る人であれば、テンセントは「オンラインゲームで大きくなった会社」というイメージを持っているかもしれません。

 しかし、2015年投入のオリジナルゲーム「Honor of Kings」は1億超のダウンロードを記録し社会現象にもなった一方で、2017年に共産党中央機関紙「人民日報」がその中毒性を指摘、ゲームが社会悪を作っていると非難。テンセントは、未成年ユーザーに対してゲームの使用時間制限をかけざるを得なくなりました。

後発の「ウィーチャットペイ」が「アリペイ」を猛追する理由

 テンセントの事業の中で存在感を増してきているのが「金融サービス」です。特に、決済システム「ウィーチャットペイ」には目を見張るものがあります。2004年にサービスが開始され広く普及していたアリババのアリペイを、2013年からウィーチャットペイが猛追。

 現在、中国国内のシェアは、アリペイとウィーチャットペイが拮抗しているとみられています。約10年も遅れてサービス開始したにもかかわらず、テンセントの追い上げが進んでいます。ウィーチャットのアプリの中にある「ウォレット」機能からすぐにウィーチャットペイが利用できること、SNSを通して顧客接点を押さえている点は、テンセントの強みです。

 ウィーチャットは、テンセントのプラットフォームへの入り口としても機能します。プラットフォームでは、ウィーチャットペイが決済機能を提供する一方で、「ウォレット」に滞留する資金は銀行・証券・保険などテンセントの金融サービスの源泉にもなります。高金利での運用、個人や中小企業への小口融資も行われます。

 ユーザーの金融ニーズや生活ニーズに合った魅力的な顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)や運用商品が提供され、プラットフォームの中で金融事業が垂直統合されていきます。そこでは、ウィーチャットのユーザーにとって便利で快適な環境が築かれることに。さらに、ウィーチャットのアクティブユーザーの増加につながるという好循環を生み出すのです。