イラン石油制裁における猶予期限が終了し、減産延長への第1関門クリア

  前回のレポート「イラン石油制裁と原油相場【後編】2020年もOPECプラスは減産を実施?」で書いたとおり、2018年同様、制裁によるイランの石油供給の減少がOPECプラスの増産実施の口実となり、7月以降、サウジアラビアやロシアが増産を始める可能性があります。

 これは、期限到来のため現在実施している減産が終了することを想定しているのではありません。2018年同様、6月の総会で“減産順守率を100%に調節する(引き下げる)”という、100%を下回らない範囲(減産合意を反故にしない範囲)で増産を行うことを決定する可能性があるという意味です。

図:減産参加国の原油生産量と減産順守率

出所:OPECおよびEIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

 

 2017年1月にはじまった協調減産において、減産順守率(100%以上で減産順守)は2018年4月にピークを迎え、その後、下落に転じました。翌5月にトランプ米大統領がイラン核合意から単独離脱を宣言、6月にOPECプラスは総会で減産を継続しながら、(イランの減少分を補完することを目的として)減産順守率を100%にするとし、限定的に増産を実施することを決定しました。 

 これにより、減産参加国の原油生産量は増加に転じ、減産順守率は低下しました。これが昨2018年後半に起きた出来事です。

 2019年5月初旬、中国、日本などの8カ国が180日間、イラン産原油を輸入できるとしたイラン石油制裁猶予の期限が切れました。米国政府が猶予期限を延長しなかったため、今後、本格的にイランの原油生産量が減少する可能性があります。

 そして、昨年同様、イランの供給減少を補うべく、6月のOPEC総会で限定的な増産を実施することで合意し、昨年同様、サウジやロシアが増産を開始する可能性があります。