5月2日以降、原油価格(*WTI原油先物、期近)は、1バレル当たり62ドルを挟んだ上下50セント程度の小幅なレンジで推移しています。上昇、下落、ともに材料があり、それらが作用していることが要因とみられます。

*WTI=West Texas Intermediate。米国南部で産出される軽質で低硫黄な原油の総称

 上昇要因としては、

・OPECプラス(OPEC=石油輸出国機構と、非加盟国合計24カ国で構成される組織)の減産が続いていること
・OPEC加盟国であるイランとベネズエラへの米国による制裁実施のために両国からの石油供給が減少していること
・イラン情勢の悪化が中東情勢を混乱させ、同地域からの石油供給が減少する懸念が生じていること

 などが挙げられます。

 一方、下落要因としては、

・米中貿易戦争の激化による世界全体の石油消費量の減少懸念が生じていること、米国の原油生産量の増加していること、および増加見通しが引き上げられたこと、
・世界の石油在庫の指標であるOECD(経済協力開発機構)石油在庫が増加傾向にあること

 などが挙げられます。

 今回のレポートでは、上昇要因の先頭に挙げた、“OPECプラスの減産が続いていること”について書きます。筆者は、この材料は足元の上昇要因である一方、今後、下落要因に変わる可能性があると考えています。

図:原油価格の推移

単位:ドル/バレル
出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)のデータをもとに筆者作成