今日のポイント

・日経平均株価は今後も乱高下が予想される。不透明な投資環境が続く中、堅実に資産形成するには、好配当利回りの大型株やREITに長期投資するのが得策と考える。

・REITには、オフィス、レジデンシャル、リテール、物流、ヘルスケアなど、さまざまな種類がある。分配金利回りが高いものには、分配金が引き下げられるリスクが高いものもある。

不透明な投資環境続く 地味に利回りを稼ぐREITに注目

 日経平均株価は、年初来、1万8,500-2万200円を中心としたボックス相場が続いています。景気と企業業績は好調で、日本株はPER(株価収益率)、配当利回りなどの指標で見て、割安と考えられます。

 ところが、米国の金融政策の先行きに不透明感があり、金融引き締めに打ち止め感が出ると円高が進むリスクがあることが、日本株の上値を押さえています。また、世界中に政治不安が広がっていることも、上値を重くしています。米国のトランプ政権が末期症状を呈していること、北朝鮮の暴走が止まらないこと、中国の海洋進出で周辺国と摩擦が起こっていること、日本の政治混迷も続いていることなど、不安のタネは尽きません。

 日本株は長期的な投資対象として魅力的と考えていますが、それでも、短期的に急落・急騰のリスクがあります。このようなときに、長期投資を始めるには、どうするべきでしょうか。私は、まず好配当利回りの大型株や、REIT(リート:上場不動産投資信託)から始めたら良いと思います。

 今日は、分配金利回りが平均約4.1%と魅力的で、東京証券取引所に上場しているREITについて解説します。

不動産への小口投資を可能にしたREIT

 個人投資家の不動産投資というと、ワンルームマンションからアパート1棟までさまざまですが、資金規模からおのずと直接投資できる対象は限られます。

 ですが、REITを通じて投資すれば、都心一等地の大型ビルに投資することもできます(図A)。

<図A>REITを通じて大型物件に投資

注・筆者作成
 

 いまは一等地の大型ビルにテナントが集中し、競争力のないビルからテナントが流出する「不動産の二極化」が顕著にみられる時代。投資するなら、一等地の大型ビルに投資したいところです。

 振り返ると、REITが普及するまでは、一等地の大型ビルに投資するには何百億円という規模の資金が必要でした。個人投資家の不動産投資では、小口で投資できるマンションなどが中心になり、大型ビルへの投資は困難でした。

 これがREITの普及によって、状況が一変。いまでは、小口資金でも、REITを通じて、大型ビルに投資することもできるようになりました。REITは、証券取引所に上場していて、一般の株式と同じように売り買いができます。最低売買単位での投資額は、10万円以下から100万円超までいろいろあります。

REITには、さまざまな種類がある

 REITには、さまざまな種類があります。もともとは、不動産に投資するファンドだったのですが、近年は、利回りが稼げるさまざまなものに投資されています。純粋な不動産投資と言えないものも出てきています。代表的な種類とファンドは、以下の通りです。

REIT種別と代表的ファンド、分配金利回り:2017年8月28日時点
 

種類 主な投資対象 コード 銘柄名 分配金
利回り
オフィス オフィスビル 8952 ジャパンリアルエステイト投資法人 3.1%
オフィス オフィスビル 8951 日本ビルファンド投資法人 3.2%
物流 物流施設 8967 日本ロジスティクスファンド投資法人 3.6%
レジデンシャル 住宅・マンション 3226 日本アコモデーションファンド投資法人 3.6%
商業 商業施設 8953 日本リテールファンド投資法人 4.2%
ホテル ホテル・リゾート施設 8985 ジャパン・ホテル・リート投資法人 4.7%
ヘルスケア 老人ホームや医療施設 3460 ジャパン・シニアリビング投資法人 4.9%
注:楽天証券経済研究所が作成。分配金利回りは8月28日時点、今後、変更になることもある
 

分配金利回りが高いものほど有望というわけではない

 上の代表銘柄は、分配金利回りの低いものから順に並べています。このような表を見ると、利回りの高いものほど有望で、利回りが相対的に低いものが魅力ないと考える方もいますが、必ずしもそうではないことを強調しておきたいと思います。

 一般的に、利回りが高いファンドほど、将来、分配金が引き下げられるリスクが高く、利回りが低いファンドほど、分配金が引き下げられるリスクが低いといえます。十分な投資資金があるなら、利回りが高いファンドと低いファンドに、分散投資することが望ましいと思います。

 オフィスREITでは、主に都心の一等地のオフィスビルに投資するファンドをご紹介しました。日本ビルファンドは、三井不動産が運営する看板ファンドで、ジャパンリアルエステイトは、三菱地所が運営する看板ファンドです。分配金利回りは3%強と、東証に上場しているREITの平均分配金利回り4.1%よりも低くなっていますが、長期投資のコアとして投資するには適格と判断しています。

 不動産の利回りは、都心一等地が低く、地方にいくほど高くなります。都心のビルは、テナントが退出しても、立地が良く競争力があるので、すぐに代わりのテナントが入ります。ところが、地方都市のビルは、テナントが退出すると簡単には代わりのテナントが見つかりません。賃貸料の引き下げ圧力が働きやすくなります。そうしたリスクを織り込んで価格がつくため、地方の不動産は相対的に利回りが高くなります。つまり、利回りが高いほど魅力的とは言えないのです。

 ヘルスケアREITは分配金利回りが高く魅力的に見えます。ただし、規制の変化や、人手不足によって、今後のビジネス環境が悪化するリスクもあります。そのようなリスクを織り込んで利回りが高くなっていると言えます。ヘルスケアREITは、分散投資の1つとしては魅力的ですが、あまり集中投資すべきではないと思います。

不動産市況が過熱しているとの見方もあるがREITは大丈夫か?

 日本は現在、都市部を中心に不動産ブームのさなかにありますが、不動産市況は過熱しており、今後、不動産ブームがピークアウトする懸念がささやかれるようになりました。その問題を含め、明日のレポートでREIT投資について、さらにくわしく解説します。