持続可能な社会に貢献する企業を応援する「サステブナル投資」「ESG投資」

 皆さんは富裕層というとどんなイメージを思い浮かべますか? 「プライベートバンクから一般の人が投資できない特別な商品を紹介してもらえる」「どんな相場環境にも対応した自分だけのアドバイスをもらえる」などのイメージをお持ちの方もいるかもしれません。

 富裕層がどんなものに投資しているか、あまり表に出ることはないので、ちょっと謎につつまれた印象があるのではないでしょうか。

 今回は、世界的に富裕層向けビジネスを展開しているスイスのUBSグループの調査から、富裕層(純投資可能資産100万米ドル=約1.1億円以上)が注目している投資を探ってみましょう。

 今、富裕層がもっとも注目している投資の一つが「サステナブル投資」です。サステナブル投資は環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の観点で評価が高い企業を選別して投資するものです。これらは英語の頭文字をとってESGとも呼ばれます。

 CO2の排出量削減、貧富の差の縮小や女性の社会進出支援、独立社外取締役の採用などで不祥事を起こさない仕組みや資本効率に配慮するなど、持続可能な社会の実現に向けて前向きな取り組みを行っている企業に投資することで、投資のリターンを狙うと同時に世の中を良い方向にシフトさせていこうという考え方です。


お金持ちほど、資産の多くをサステナブル投資に回す!?

 図1に見られるように、富裕層は全体で見ると投資可能な資産の36%をサステナブル投資に当てています。中でも注目されるのは、投資可能資産が多い富裕層ほどサステナブル投資への配分を高めているという点。投資可能資産5,000万米ドル(約55億円)以上の超富裕層を見ると、実に投資可能資産の半分以上をサステナブル資産へ投資していることが伺えます。

図1 富裕層のサステナブル資産への投資配分(投資可能資産規模別)

 サステナブル資産に投資している富裕層にその理由を聞くと、多くの人が、長期の投資対象としての魅力に加えて、「世の中に対して善い行いをしている満足感」を挙げています。日本では、伝統的に「お金は額に汗して得るもの」という考え方が根強くありますが、サステナブル投資のような動きが広がってくれば、投資そのものに対する考え方も変わるかもしれません。

 また、富裕層の半数がサステナブル投資は伝統的資産に投資するよりも高いリターンが期待できると考えており、保有資産が多いほど概ねその割合が高くなる傾向が見られます。
 

図2 サステナブル投資のパフォーマンスが伝統的資産を上回ると考える富裕層の割合(投資可能資産規模別)

注:UBSグループより。100万米ドル以上の投資可能資産を持つ世界10ヵ国(ブラジル、中国、ドイツ、香港、イタリア、シンガポール、スイス、UAE、英国、米国)の富裕層5,300人に対するアンケート調査。調査時期:2018年6月~8月。上記は過去のものであり、将来の動向を示唆、保証するものではありません。

 

次回は、「サステナブル投資は実際に儲かるか?」という点について、考えてみたいと思います。

特集:サステナブル投資
(1)「正義=利益」は成立する!?富裕層の新常識「サステナブル投資」って何だ?
(2)GPIFも導入。サステナブル投資の長期リターンと世界的な資金の集まり度合い
(3)イクメン、CO2削減・・・社会にやさしいサステナブル企業は、株価も優秀!?
(4)「不快」に投資しない。簡単にできるサステナブル投資。あなたのお金で世界の幸福度が変わるかも