退職金が細切れになるリスクは、年収増でカバーしよう

 資産を引き継げるかどうかは、会社が実施していた制度によって異なります。まとめておくと、こうなります。

資産を移すケース

  • 確定給付企業年金について、ポータビリティの権利行使をした場合
  • 確定拠出年金に入っていた場合

資産を移せないケース

  • 退職一時金制度の場合
  • 中小企業退職金共済制度の場合
  • 確定給付企業年金の一時金精算で現金を受け取ってしまった場合

最後にマネープラン上の問題点を、もうひとつ指摘しておきます。

 退職金・企業年金制度の多くは、長期勤続を優遇する制度設計であるということです。22歳入社60歳定年退職のモデルがあったとき、退職金の権利は勤続38年にわたって38分の1ずつ増えていくわけではありません。「勤続20年未満」は伸び率が低く、「勤続20年以降」は伸び率が高いことが多いのです。

 20歳代の若手よりも40歳代のベテランのほうが会社への貢献も大きく、均等でないのには一定の合理性もあるのですが、極端に偏らせていることが少なくありません。

 また、20~40歳代の自己都合退職者は、さらに退職金を減額する慣行も多くあります。勤続年数にもよりますが、30%以上受け取り額がダウンすることもしばしばあります。そうすると、中途退職時にもらった退職金を全額保全していても、一社に勤め続けていた場合の退職金の権利を下回ることになります。しかも定年まで勤め上げたとき、勤続年数が少ない分、転職先の退職金水準もプロパー社員より低くなることは避けられません。

対策としては2つ考えられます。

1.受け取った額は、資産運用に供してインフレ以上の利回り確保を意識すること

2.キャリアアップによる年収増の一部を、自分の老後のための資産形成に回すこと

 今よりも増額するなど、年収アップを勝ち取る転職が成功して落ち着いたら、ぜひ老後のための資産形成もスタートしてください。そうしないと、現役時代は年収増のメリットを享受したけれど、最後の退職金が少なくて老後にがっかりするキャリアになってしまうからです。もちろん、あなたの資産運用スキルはここで最大限に活用できます。

ぜひ上手にお金を貯め、増やして、老後の豊かさにもつなげてみてください。