長寿化は喜ばしい半面、マネープランとしては難しさもある
100年人生が現実のものとなったとき、それは喜ばしいことばかりではありません。マネープラン上は難しさがあります。なぜなら「引退年齢の上昇」以上に「セカンドライフ期間の長期化」が進んでいるためです。
簡単にいえば、定年が5年延びても寿命が10年伸びれば、老後のために確保すべき現役時代の資金ノルマは向上します。そもそも自分の老後が何年あるのか予見できないにもかかわらず、「長くなるほう」に備えるのは難しいものです。
月たった5万円を公的年金に上積みしたいと考えても、老後が20年である場合と35年である場合には準備額は900万円アップします(20年なら1,200万円、35年なら2,100万円。利息などは考慮せず)。
割合でいえば、20年の準備と35年の準備の差はなんと「+75%も多い準備」ですから、けっこう厳しいハードルです。
基本的には引退年齢を少しでも遅くし、資産形成する年数を増やし、かつ取り崩し年数を減らすようなアプローチを取るべきでしょう。
最初から引退年齢を5年遅らせることができれば、老後が長くても短くても準備額は5年分減らせます。かつ取り崩し期間は5年短くなるわけですから、先ほどの例でいえば、目標額を300万円減らせるわけです。
退職給付、自助努力、高齢期の雇用をどうバランスさせるか
老後に備えることを考えた場合、基本的には3つの柱を組み合わせ、バランスさせていくことになります。1本の柱では成立しませんし、3本とも充実するのはまれなので、いずれも目を配っていきたいところです。
具体的には会社が用意してくれる「退職給付」「自助努力」「高齢期の雇用」を組み合わせていきます。しかしこの3種類は「加入の自由」「実行するタイミング」などが違いますので注意が必要です。
例えば「退職給付」は会社が設定するかどうか、金額水準をどうするかのイニシアチブを持っていますから、「自分でいくら貯める」という自由設計はできません。給与とは別に外部積み立てされているメリットはありますが、給付引き下げのリスクもあります。
タイミングで考えると、「自助努力」による資産形成と「高齢期の雇用」による収入確保はまったく重ならないものです。自助努力は現役時代から定年までのあいだにコツコツ取り組むものですが、高齢期の雇用は定年直前になってみないと条件がはっきりしません。定年が延長されるかどうか、いい条件で働けるかどうか、何歳まで働けるかどうか、あるいは自分の健康状況がどうかなど、その年になってみないと分からない要素が多いのです。
優先順位としては「現役時代に、しっかり老後に向けて備える努力をしておく」うえで「働けるなら高齢期も働くことでさらに経済的ゆとりを確保する」としたいところです。
そうしないと「現役時代、計画していなかったので老後に向けた資産形成は十分でなく」「仕方ないので何歳になっても働き続けなければならない」という苦しいスパイラルに陥ります。できればこれは避けたい。
結果として、健康で働く条件も恵まれていたので、67~70歳まで働くことができ、最後の最後にお金も貯められリタイア後の余裕が得られた、ということもありますが、むしろそれは幸運だったと考え、後倒しに依存しないほうがいいでしょう。
自助努力としては、預金ベースであれば財形年金(会社がやっている場合、金利非課税)、預金と投資信託をどちらも選択できるiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)<掛金が所得控除、かつ運用益非課税>、投資信託を活用するつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)<運用益非課税>などの選択肢を組み合わせていくことになります。原則としては「iDeCoファースト」で、財形年金とつみたてNISAを組み合わせていくといいでしょう。
前回のコラム「まだ間に合う?45歳夫婦が「ダブルiDeCo、ダブルNISA」で実現する4,000万円の道」では、40~45歳で気がついてスタートしても、iDeCoとつみたてNISAのフル活用でなんとか老後資産形成は間に合うことを紹介しています。あわせてご覧ください。
今回は準備方法を中心に考えてみました。「老後資金の受け取り方」についても議論が必要です。1回では収まらない大テーマなので2回に分け、次回は「100年人生の老後資金の受け取り方法」について考えてみたいと思います。