勘違い6:残高当たりのフィーは合理的だと思っていた

 運用の報酬は、「運用資産額×運用期間」に比例して、通常年率のフィーの形で「資産額の○.××%」といった具合に決まっている。これは、業界の慣行でもあったし、「運用のメリットは年率のアクティブリターンによって、資産額×運用期間に比例して顧客にもたらされるのだから」妥当な決め方なのだろうと筆者は長年思ってきた。

 しかし、よく考えてみると、ファンドマネージャーの仕事は運用金額に比例して大変になる訳ではないし、仕事で大変なのは主としてファンドの立ち上げ時期であって、ポートフォリオができてしまうと稼ぐのはポートフォリオであり、ファンドマネージャー本人は意外に暇だということに気づく。これは、ファンドマネージャーに限らず、証券マンやFP(ファイナンシャルプランナー)、ロボアドバイザーのような広義の運用アドバイス全般にいえることだ。

 残高と期間に比例するフィー方式は、今流行のサブスクリプション・ビジネス的でサービスの売り手側には好都合な仕組みだが、サービスの実態と供給コスト構造には適合していない。

 たとえば、個人向けの運用サービスは、ポートフォリオ組成と管理だけのコストに近い公募の投資信託やETF(上場投資信託)などが利用可能であれば、「正しいやり方を教えること」だけで実現可能だ。
 

勘違い7:ファンドマネージャーは長期的に有望な仕事だと思っていた

 金融資産を運用したいと思っている顧客に取って必要なものは、「正しい運用の方法を知ること」と「運用の部品(たとえばETF)が利用可能であること」の2つであって、「継続的に運用判断を提供してくれる専門家」ではない。

 端的に言って、ポートフォリオを組成して管理・保管するサービスでは今後もフィーを取り続けることができるとしても、継続的な「運用判断」・「運用アドバイス」といったサービスに対する価格を保つことがこれからは難しくなっていくのではないだろうか。前項の「残高ベースのフィーが難しくなる」という事態が同時に進行する可能性もある。

 もちろん、すぐにかつ全面的にそうなるということはないだろう。しかし、ファンドマネージャーの仕事の本質は「運用判断の提供」なのだから、これに対して高いお金を取ることがどんどん難しくなるのだとしたら、ファンドマネージャーは長期的に有望な職業だとはいえないのではないか。ファンドマネージャーは、息子や娘にも勧めていい職業ではないかと筆者はこれまで思ってきたのだが、真剣な再考が必要なのかもしれない。
 

<反省、追記>

 これまでの自分の勘違いを振り返ってみると、将来を見るための情報や知識を案外持っていながらも、過去の延長線上での予測形成、希望的な観測や、思考の不徹底などで、適切な認識を早く持てなかったことがわかる。

 将来について予測するには、自分の先入観や好き嫌いを意識的にリセットして、徹底的に考えてみなければならないことが改めてわかった。投資にあっても、人生にあっても、これは同じだろう。

 一職業人としての筆者は、今後も資産運用の仕事に関わっていくつもりだが、人生が長いことを考えると、もう一分野「専門」と言える領域を作らなければならないのかも知れないと考えている。