2016~17年に空前の大ブーム、18年にブームは終了
2017年にかけて、半導体業界は、空前のブームに沸きました。半導体ブームを牽引していたのは、データセンターや高機能スマホで使われる、半導体フラッシュメモリでした。
クラウド・コンピューティングが普及し、個人でも大容量の動画を簡単に保管できるようになったことから、データセンターでのメモリ需要が急拡大しています。2020年に向けて、世界的に、5G(第5世代移動体通信)への移行が進むと、データセンターでのメモリ需要は一段と拡大が予想されます。
他にも、半導体を使う分野が増えています。自動車の電装化が加速しており、自動車は半導体需要を牽引する重要分野となりつつあります。EV(電気自動車)・自動運転の普及が進むと、需要の伸びがさらに拡大が予想されます。
AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)やロボットの普及も、半導体需要を増加させています。産業用機器でもIoTが広がっています。
2016~17年には、急拡大する半導体需要に供給が追いつかない状態が続きました。最先端のフラッシュメモリ(64層の3次元NANDフラッシュ)の生産が難しく、歩留まりがなかなか上がらなかったためです。
【注】歩留り(ぶどまり)
工場で生産される半導体から、「不良品」を取り除いた出荷可能な「良品」の比率を、「歩留まり」という。最先端の半導体は、生産が難しく、当初、歩留りが低い。技術がこなれて生産が軌道に乗ると、歩留りが上昇する。
需要が増大する中、供給が増えないため、2016~17年は、フラッシュメモリの市況が上昇を続けました。生産が増えるにしたがって価格が下がるのが当たり前の半導体で、価格が上昇するのは異例のことです。これが、過去に例のない半導体ブームを生じました。半導体メモリを生産するメーカー(韓国サムソン電子、東芝半導体など)が巨額の利益を上げる中で、他社より少しでも早くフラッシュメモリの生産を増やそうと、世界の半導体メーカーが、競って設備投資を増やしました。
空前のブームが続くうちに、半導体スーパーサイクルが始まったという声が出ていました。半導体産業から好不況の波が無くなり、長期成長するとの見方です。
ところが、その見方は外れ、足元、半導体メモリの需給が緩み、半導体ブームはいったん終了したと見られています。それには、3つの理由があります。
- 最先端のフラッシュメモリの歩留まりが上がってきたことで、需給が緩和
- 米中貿易戦争(ハイテク戦争)の影響で、中国で半導体需要が減速
- 仮想通貨の急落を受け、中国で仮想通貨マイニング需要が低下