2018年秋以降の株価下落で、成長株の中にも株価が大きく値下がりするものが目立っています。これを絶好の買い時とみる専門家もいるようですが、本当にそうなのでしょうか。

 

アベノミクス相場で株価が大きく上昇した銘柄が今では「買える」水準に

 2012年11月から始まったいわゆる「アベノミクス相場」。6年余りの間、特に毎年増収増益が続く成長株を中心に、株価が大きく上昇する銘柄が数多く出現しました。
 5倍、10倍は当たり前、中には50倍、100倍に株価が大化けした銘柄もありました。

 こうした株を上昇の初期から買えていれば、非常に大きな恩恵を受けることができました。しかし実際にはそうしたことは困難ですし、アベノミクス相場が始まってしばらくたってから株式投資を始めた方の場合は、せっかく増収増益の成長株を見つけても、株価が大きく上昇しすぎて手を出せなかった、というケースもあったと思います。

 しかし最近の株価下落により、高くて手を出せなかった銘柄が、手を出せるレベルまで下落してきたのです。
 いわゆる「投資のプロ」と呼ばれる人たちも、好業績でありながら高すぎた銘柄の株価下落を歓迎し、買い時が到来したと個人投資家に対してアドバイスしています。

 

株価が大きく下落した株を手放しで歓迎して良いのか?

 でもこの考え方は果たして正しいのでしょうか? 筆者は必ずしもそうとは思いません。

 例えば典型的な例として、次のようなA社株をイメージしてください。

  • 3月決算銘柄で毎年増収増益が続いている。2019年3月期の業績予想も好調
  • アベノミクス相場開始時の株価200円から、2018年9月の高値4,000円まで20倍に株価上昇
  • 高値4,000円をつけたときのPER(株価収益率)は60倍
  • 現在は1,600円まで株価が値下がりしている

 A社株が2018年に高値をつけたときのPERは60倍だったわけです。そして安値から20倍にも株価が上昇していました。いくら成長株といっても、この時点で新規買いするのはさすがに強い抵抗感を感じる水準です。

 これが現在は株価が60%値下がりして1,600円、PERも24倍まで低下しています。増収増益が続いていて業績に陰りも見られないのであれば、かなり魅力的な水準にまで株価が下がってきたといえます。
 重要なのは、これを手放しで喜んでよいのか、という点なのです。