米国の「景気後退確率」は上昇しても25%程度?

 昨年12月に米国株を急落させた悪材料の一つとして「景気後退への恐怖」が挙げられます。米債券市場で「逆イールド」(債券市場の利回り曲線上で長短金利が逆転する現象)が接近したことで、米国経済の景気後退(リセッション=実質経済成長率が2四半期連続マイナス)と株式の弱気相場入りを巡る悲観が強まりました。

 実際、多くのエコノミスト(専門家)が2019年の米成長率予想を下方修正し、2009年以来約10年続いてきた景気拡大の「息切れ」が視野に入ってきました。ただ、IT(テクノロジー)の進歩とグローバル化でインフレは低位で安定し、金利が低位水準にあることで「景気後退入り」への悲観は時期尚早と思われます。

 図表2は、エコノミストが予想する「今後1年以内に米国が景気後退に陥る確率(中央値)」の推移です。米中貿易戦争の激化、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ観測、株式市場の乱高下などで「景気後退確率」は25%まで上昇しました(11日)。換言すると、「1年以内は景気後退入りせず成長が続くとみる確率」は75%ということ。この予想が正しいなら、昨年12月の株価急落は米景気を悲観し過ぎた「売られ過ぎ」と言えそうです。

 12月の米雇用統計で確認された労働市場と年末商戦の堅調は米景気の底堅さを裏付けるものでした。もちろん、貿易摩擦激化に伴う米中貿易(輸出入)の鈍化、中国製造業の業績悪化に伴う設備投資先送りが米経済に与える影響を見極めていく必要はあります。

 一方、中国政府は米国との対立を生みだした「輸出主導」から「内需(個人消費)主導」への成長エンジンのシフトを後押しする景気対策や金融政策を打ち出しています。こうした期待を映し、中国株式が徐々に底入れ感を示している状況にも注目です。

図表2:米国の景気後退入り確率は上昇しても25%

注:米・景気後退確率=United States Recession Probability Forecast (12 months)
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年1月11日)