2019年、原油と金相場の川上に立つのは「トランプ大統領」

 ここからは新しい元号の元年となる2019年の原油と金相場を考える上で、筆者が重要だと思う点を述べます。キーワードは「トランプ大統領」です。

 世界は今、「トランプ大統領=物議を醸し、争いの火種を振りまく存在」として見ています。好き嫌いを抜きにして、「市場への影響度」という点でトランプ大統領の存在を考えたとき、その影響度は非常に大きい、と筆者は考えています。つまり、世界中の市場動向を考える上で「トランプ大統領」という変動要因を無視することはできないということです。

 原油や金の市場もその中の一つです。以下は、2018年12月時点のトランプ大統領の、原油・金相場への影響をイメージしたものです。

図:トランプ大統領の原油・金相場への影響(2018年12月時点)

出所:筆者作成

   12月7日(金)のOPEC・非OPEC閣僚会議にて、2019年1月以降も半年間、原油減産を延長することが決定しました。しかし、日量120万バレルという減産の規模は決して大きなものではなく、むしろ急増中の米国の原油生産量を考慮すれば心許ないものでした。

 記者殺害事件でトランプ大統領に借りを作ったサウジアラビアが、さまざまな意味で原油市場に存在感を強めてきているトランプ大統領を忖度(そんたく)し、大胆な原油の減産に踏み込みませんでした。原油市場へのトランプ大統領の直接的な関与が強まっている、と筆者は考えています。

 一方、金は、12月20日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、従来予想されていた2019年の米国の利上げの予想回数が3回から2回に引き下がったことが明らかになりました。

 景気減速を嫌気して利上げは誤った判断だとけん制してきたトランプ大統領への忖度という意味を含んでいると、筆者は考えています。米国の金融政策に関わりを強めたことで、ドルの動向と相反的な関係にある金市場へのトランプ大統領の間接的な関与が強まっているとみられます。

2019年、トランプ大統領が望むこと・望まないこと

 原油関連で、トランプ大統領が望まないことは、

●10月以降、米国の原油生産の70%弱(2018年11月時点)を支えるシェール主要地区の生産量がコスト割れを起こしていること
●45ドル近辺となった原油相場がさらに下落し、米国内の石油関連企業に悪影響が生じていること
●米国の石油関連企業の株価、引いてはそれを含む主要株価指数が下落すること

 金関連については、

●利上げの温度感が再び上がり、利上げの回数が増えること
●利上げの幅が拡大し、米国や世界景気が後退する懸念が生じること

です。

 逆にトランプ大統領が望むことは、

●原油価格が徐々に小幅に反発して底堅く推移し(大幅反発はNG)、石油関連企業の株価下落を回避すること
●利上げの温度感が低い状態が保たれること(ドル相場の弱含みが続けば、金相場は上昇しやすくなる)

だと考えられます。

 その意味では、2019年は原油も金も、トランプ大統領に支えられながら推移していくシナリオが考えられます。2019年は、2018年以上に、コモディティ市場を見る上で、トランプ大統領の一挙手一投足に注目する必要がありそうです。

 

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 2018/12/17 「2019年の原油相場の見通し:レンジは45~65ドル。トランプ相場継続か」

 

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