2019年の為替マーケットは、2年半の間続いてきたドル高時代の「終わりの始まり」の年になると予想

 2018年のドル/円の年間レンジ幅は9.94円でした(12月17日時点)。来年2019年のレンジ幅も10円と仮定するなら、高値のメドは115.00円、安値のメドは105.00円と予想します。高値と安値の中間は110.00円になります。この水準を2019年のドル/円のブル(円安)とベア(円高)の分かれ目の目安とします。12月17日発表の日銀短観によると、大企業・製造業の想定為替レートは109.41円。ドル/円が110円を下回るようになれば、日本企業は円高対策を本格的に考えるようになるでしょう。

 ところで、年間のレンジ幅が10円以下というのは、歴史的に見ても非常に狭いといえます。そこで期待も込めて来年のレンジ幅予想を15円まで広げるとしたら、高値のメドは115.50円、安値のメドは100.50円、そして半値レベルは108円になります。100円台まで円高が進むならば、勢いでドル/円が2ケタになる可能性も否定できません。

 

2018年のFXのテーマは「貿易」

 筆者は1年前に、2018年は貿易がFXのテーマになると予想しましたが、今年の世界の金融市場は、まさに「貿易戦争」を中心に動いてきたといえます。

 3月、トランプ大統領は中国が知的財産権を侵害しているとして、最大600億ドル(6.3兆円相当)の高関税を課す制裁措置を発表しました。このショックでNY株式市場は暴落。3月26日には、ドル/円が年間安値となる104.61円まで下落しました。それでもフリーフォール(急落)せずに済んだのは、マーケットをパニックに陥れた黒魔術「貿易戦争」に対して、白魔術である「米利上げ」が立ちはだかったからです(※)

※白魔術とは、好ましい目的に使われる魔術、魔法。文化人類学で定義される聖人の術とほぼ同義とされる。黒魔術と対比して用いられる。

 FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げは、日本や欧州など他の先進国との金利差を広げてドルの価値を高めるだけはありません。利上げする体力があるというのは、米国経済の強さの証明でもあり、それがドルに対する信頼へとつながるのです。

 FRBは、3月に引き続き6月、9月と利上げを続け、そしてドル/円は5月には早くも111円を回復、10月には114.55円まで上昇して、これが現時点での年初来高値となっています。黒魔術「貿易戦争」によるリスクオフでドルが売られても、白魔術「米利上げ」の力でドルが買い戻されるということが繰り返され、ダウ平均株価も過去最高値を更新し続けました。