企業は稼いでいるのに、家計が受け取る賃金は伸び悩み

 さて、家計にはどのような変化があったのでしょうか。従業員の年収と人件費を見てみましょう。年収は法人企業統計の給与と賞与の総額、人件費はそれに福利厚生費を加えたものです。福利厚生費には企業が負担する厚生年金や健康保険、退職給付費用や退職金などが含まれますので、会社に勤めている人の実感は年収に近く、企業の実際の負担額は人件費になります。

 グラフではその数字を総従業員数で割って、従業員一人当たりの数字にしています。総従業員数は常用従業員の平均従業時間に換算されているので、例えば、正社員の一日当たり平均就業時間が8時間のとき、パート社員4人が4時間働いた場合は2人(16時間÷8時間)と計算されます。フルタイム労働に換算した時の従業員数というイメージです。

 従業員一人当たりの年収も人件費も伸び悩んでいてピークを回復していないことが分かります。従業員一人当たり年収・人件費がピークだった1997年度と2017年度を比べると、従業員一人当たり年収は391万円から369万円に、従業員一人当たり人件費は460万円から426万円に減少しています。

◆企業は利益を出し、貯めているのに給与は上がらず・・・

(出所)財務省「法人企業統計年報」を基に筆者作成

 一人当たり年収・人件費の減少は、賃金を受け取る労働者側の問題なのか、それとも給与を支払っている企業側の問題なのでしょうか。

 たしかに非正規の職員・従業員の割合は増加しています。15~24歳という学生世代のアルバイト要因や、平均寿命・健康寿命が延びて元気なシニアの方が増えたので、定年退職後にリタイアするのではなく、嘱託やパートタイムで働くことも多くなりました。こうした層ではフルタイムで現役バリバリに働く人達に比べると、時間当たりの生産性は低いかもしれません。

◆非正規社員の割合は、2割から4割に倍増

(出所)総務省統計局「労働力調査」

◆男性では、若手の非正規雇用が進んだ

(出所)総務省統計局「労働力調査」


◆女性の働き盛り層は、正規が増えつつあるが、若年・高齢層は・・・

(出所)総務省統計局「労働力調査」

 ただ、こうした働く側の質の変化だけでは年収の低下を説明できる訳ではなさそうです。従業員一人当たりが生み出す付加価値は増えているのに、人件費率は下がっているからです。簡単な仕事に従事する割合が増えれば一人当たりの付加価値は減るはずなのに、リーマンショックによる落ち込みを回復した後は、付加価値は増加基調が続いています。

◆会社のための稼いでいるのに、給料で還元されていない

(出所)財務省「法人企業統計年報」を基に筆者作成

 従業員が生み出した価値がちゃんと還元されているのであれば、付加価値に占める人件費率は一定のはずなのに、リーマンショック後は低下傾向が続いています。折角、景気が良くなって、従業員の努力が成果に結びつくようになったのに、肝心の給料が増えないのでは気分が盛り上がりません。