相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく

 米国の著名投資家ジョン・テンプルトンは、「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」と述べた。この言葉はトウシルの相場格言でも取り上げられているので、そちらも参照していただきたい。

 ジョン・テンプルトンは、

  1. 市場が総悲観となった局面が、強気相場の出発点になりやすい
  2. 先行きに警戒感や疑い(懐疑)が残るうちは徐々に上昇(回復)を続ける
  3. 警戒感が薄れ楽観的になったころは、相場の天井圏が近い
  4. 市場が総強気や幸福感に浸っているときに、上昇相場が終わることが多い

 という相場の4段階の流れを説明しているが、それを相場の波動でみると、以下のような図になる。

エリオット波動の基本と波の個性

出所:『エリオット波動入門――相場の未来から投資家心理までわかる』(ロバート・プレクター著 パンローリング)

 

 ラルフ・N・エリオットは、「ランダムに見える市場の価格変動には、よく観察すると一定の秩序が存在する」と述べ、相場のフラクタル構造を明らかにした。フラクタル構造とは、「どんなに小さな一部分をとっても、それが全体と同じ形をあらわしている構造」のことで、<自己相似>と呼ばれるものである。相場のフラクタル構造は、フィボナッチ数列のもと、5つの局面(5波動の推進波)とそれに続く3つの局面(3波動の修正波)という8つの基本リズムを1つの周期として反復して繰り返す。

 先週のレポートで取り上げた<エリオット波動>について照会が多かったので補足をしておきたい。エリオット波動分析の第一人者であるロバート・プレクターは、「株式相場は自らの法則を持っている。それはわれわれが日常的な生活のなかで経験しているような直線的な因果関係によってできるのではない。株価の方向はニュースによって作られるのではないし、また株価は一部の人々が言うような循環的にリズムを描く機械でもない。株価の動きは、偶然のように思われる出来事と周期性とは独立した繰り返される形を反映したものである」と述べている。

 このロバート・プレクターの発言は一般人からみたら驚くべき見方と言ってよいだろう。「株価の方向はニュースによって作られるのではない」と断言しているのである。相場はニュースによって作られるのではない。長くマーケットと格闘した人なら分かるだろうが、ニュースは相場が作るのである。そして、相場は行きたいところに行く。

NYダウ(週足)とエリオット波動の波動カウント

出所:石原順

 

【エリオットはこうした5つの波の形について、次のような一貫した3つの特徴を挙げている。すなわち、第2波は第1波の始点を下抜くことはない、(2)第3波が最も短い波になることはない、(3)第4波が第1波の価格帯に割り込むことはない。 エリオットはこの5波のパターンのなかで、決定的に重要なひとつの形には特に言及していないが、株式相場が5つの波のパターンをとることだけは確かである。どのようなときでも、相場はトレンドの最も大きな段階においては、基本的にこうした5つの波のパターンをとることが確認されている。株式相場が進行するにつれてこの5つの波のパターンは決定的な形となっていくので、そのほかのすべてのパターンもこの5つの波のパターンに内包される】

出所:『エリオット波動入門――相場の未来から投資家心理までわかる』(ロバート・プレクター著 パンローリング)

 エリオット波動は決して万能の指標ではない。しばしば、カウントの打ち間違えが生じる。ポール・チューダーはそれについて、「間違ったら、正しい道に戻ればいいだけ」と述べている。相場は日和見主義でないと生き残れない。相場観(思い込み)やポジションに忠誠を尽くしてはいけない。

 

FRBが資産売却をおこなっているなかで、今年の株式相場は癇癪(かんしゃく)を起こし始めた

 新債券王のジェフリー・ガンドラックが、「株式相場の大虐殺は通常、債券価格を押し上げるが、発行増が米国債の値上がりを限定的なものにしている」と発言している。これが、為替相場が動かない大きな要因だ。

【株式相場の「大虐殺」は通常、債券価格を押し上げるが、発行増が米国債の値上がりを限定的なものにしているとダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高投資責任者(CIO)は言う。世界的な株売りの中で米国株は2018年の上げを失い、10年物米国債の利回りは2.88%と8月以来の低水準に近い。11日のウェブキャストでガンドラックCIOは米国債について、「世界の株式市場での大虐殺を考えると、大した値上がりではない」とし、「その理由の一つは供給だ。これが引き続き影響してくるだろう」とコメント。また、「債券市場は米金融当局が19、20両年に1回も利上げをしないと考えている」と述べた上で、「当局は株式相場に回復が見られた場合に備え、利上げできるような柔軟性を残す表現を維持しようとするだろう」と予想した。新興国市場株は長期的には米国株のパフォーマンスを上回り、ドルは下落する公算が大きいなどとも発言した】

(12月12日ブルームバーグ『株「大虐殺」の割に米国債値上がり大したことない-ガンドラック氏』より)