本日の注目通貨

ポンド/ドル:約2年ぶり安値、反発の兆し見えず

「英国のエクスポージャーが多い企業は負け組」と欧州株式市場でいわれるほど、ブレグジットのドタバタを嫌って投資マネーが英国から逃げ出し始めています。

 メイ英首相は10日、11日に予定していたEU(欧州連合)離脱協定の議会採決を、反対多数が多く否決されることが明らかなため、先送りすることを決めました。

 水曜日のポンド/ドルは、節目の1ポンド=1.2500ドルを下に抜け、2017年4月以来1年8カ月ぶりの安値を更。ポンド/円も1ポンド=141.50円まで下落しました(チャート2、3)。

 離脱協定で最大の争点となっているのが、北アイルランド(英国側)とアイルランド(EU加盟国)との国境をどうやって管理すべきか、ということ。これが、いわゆるバックストップ問題といわれるものです。

 バックストップとは、国境管理に解決策が見つからなかった場合に備えたセーフティネットのようなもの。EU側は、北アイルランドとアイルランドの間に物理的な国境をつくらず、北アイルランドを関税同盟に残す案を提案しています。

 しかし、そうなると同じ英国の北アイルランドとその他の地域が通商規制によって分断されてしまうことになり、さらに英国はEUの承認なしでは関税協定から離脱できなくなります。強硬ブレグジット派議員は、「ブレグジットの大義である英国のEUからの独立が永遠に失われてしまう」として、期限を限定すべきと反対しているわけです。

 メイ首相は再交渉のためEU各国の首脳を訪問しています。EU側は再交渉には応じない態度ですが、なんらかの譲歩案は用意しているようです。英議会は12月20日から休み。メイ首相は、クリスマスを利用して英議員の説得するのでしょうが、結論は来年1月に持ち越されました。

 英国とEUは最終的には合意する、という慎重ながらも楽観論はまだ残っています。しかし、たとえ合意したとしても、その先どうなるかは全く不透明で、ポンドは一時的に反発があっても、トレンドとしてのポンド安は継続すると思われます。