12月3日~7日 原油マーケットレビュー
前週のNY原油相場は上昇。需給改善期待から買いが先行、WTI期近1月限は一時54.55ドルまで上昇する場面もあった。しかし、期待感が一段と強まるには至らず、先行きの需給改善に懐疑的な見方が広がり、上値は抑えられている。世界的な株安商状も圧迫要因となった。
週前半は需給改善への期待が高まった。カナダ最大の原油生産州であるアルバータ州の首相は、余剰感が強いことや重質原油の下落を理由に、州内の石油関連業者に対して日量32.5万バレルの減産命令を下した。オイルサンドの生産が増え続けるなか、輸送インフラが追いつかず、在庫が積み上がった状態にある。過剰供給を背景に同国産重質原油は安値圏にあり、同国のエネルギー業界は危機的な状況に陥っているため、この危機を緩和させるべく、原油およびビチュメンの生産量を1月から8.7%削減するなどの施策を講じる。また、前々週末の米中首脳会談で、追加関税を一時的に見送るなど両国が貿易摩擦解消に向けて取り組むことで合意、貿易戦争の一時休戦により、需要抑制への懸念が幾分後退した。カナダ産原油の減産はマーケットにおいてプラス要因ではあるが、米中合意は懐疑的な見方もある。追加関税の発動までには90日間の猶予しかなく、交渉がまとまらない可能性も孕んでおり、需要面での押し上げ効果は限定的だった。
週後半は一転して需給改善期待が薄らいだ。6日に開催された石油輸出国機構(OPEC)総会では、産油量削減で合意に達したが、減産の正式発表は見送られた。翌7日にロシアなど非加盟国との会合を控えていることもあり、ロシアの確約を取り付けたい意向の表れとみられる。ロシア抜きでは決めかねているOPECに対して求心力低下を懸念する向きが増え、マーケットにはマイナスに働いた。また、世界的な在庫の積み増しを抑制するためには日量130-140万バレルほどの減産が必要となるが、OPEC内で合意した減産規模は最大で日量100万バレルとみられ、このことも需給緩和感解消にはつながり難いという見方を誘った。市場が注目した7日の会合の結果、1月からの日量120万バレルの協調減産で合意、OPEC総会の暫定合意した減産幅を上回ったことで、一時買いが強まる場面も見られた。しかし、この程度の減産幅では需給改善ペースが速まらないのではとの懐疑的な見方も強く、早々に上げ一服となり、週初の高値を上抜くには至らなかった。
また、米国が純輸出国に転じたことも先行きの不安要因となった。原油在庫は市場予想以上の大幅な減少となり、11週ぶりに在庫取り崩しとなった。その在庫減少の背景は、輸入量の大幅減、そして輸出量の増加にある。原油輸出量は過去最高を記録、石油製品を含めた輸入と輸出のバランスは、輸出が上回る格好となり、統計開始来初めて純輸出国となった。一時的な可能性は十分考えられるが、輸出力が高まっていることは明白であり、市場への供給が今後も増える可能性を示唆する。在庫減少は一時的な買い材料にとどまるが、米国から世界の市場への供給が増えている点は、中長期的にみて売り材料となる。市場では後者を懸念する向きが多く、これも相場を圧迫する一因となった。
OPECらの減産、カナダの減産により過剰供給が幾分抑制されることは確かではあるが、需給緩和感を解消させるには時間を要する、ないしは需給緩和状態が長引く可能性を市場は警戒している。世界的な株安によりリスク選好度も低下しており、再度節目の50ドルを割り込む可能性が出てきた。短期的には売られやすいだろう。
今週の予想
- WTI やや弱め 49.00-55.00ドル
- BRENT やや弱め 58.00-64.00ドル