12月に注目したい新興株の動き
12月の新興株市場は、季節的にいえば「上がりやすい月」です。算出が開始された2003年以降、12月の東証マザーズ指数は過去15年中で13年上昇(月間での勝率は約9割!)。過去15年の平均騰落率は+4.1%と良好で、直近でも3年連続で上がっています。ちなみに昨年の12月は+5.6%です。
年末にかけて新興株が強含む理由としては、「配当の再投資」という需給要因が挙げられます。9月末に権利が落ちた3月決算企業の中間配当は、11月中旬から12月下旬にかけて振り込まれます。東証1部銘柄だけで計算した数字ですが、11月19日~12月27日に支払われる配当金額は総額5.4兆円に上ります(社数は1,076社)。
この振り込まれた配当分ですが、日本株型の投資信託を運用するアクティブファンド等については株への再投資に回すと見られています。株から生み出されたお金(配当金)が、株に還流することが、平常時には存在しないニューマネー流入として好需給につながると考えられます。
12月の新興株のトラックレコードは抜群。定量的には、地合いの急激な悪化に賭けるには分が悪そうです。とはいえ…何か気にすべき点はないか?でいえば、今年の12月は無視できない要素が2点あります。今をときめく、サンバイオとソフトバンク(IPOする通信子会社のほう)です。
まず、サンバイオ。11月の急騰で、東証マザーズ指数に占める構成ウエイトが約1割となっています。サンバイオが一度ストップ安すると、それだけでマザーズ指数が2%弱押し下がるような存在です。指数を押し上げるにも押し下げるにも、大きな影響を手にしています。信用買い残も新興株ではダントツで、金額ベースで約300億円。これは、2位のメルカリの約3倍に及びます。
そのサンバイオは1月決算銘柄ということもあり、決算発表のタイミングが他の銘柄と異なります。次に発表するのは第3四半期決算ですが、その予定日が「12月14日(金)」。前後では決算プレー(決算前に買う/売るといったイベントドリブン)が予想され、新興株にとっての12月の重要日に位置付けられそうです。
そしてソフトバンクのIPO。公開規模は過去最大の2.6兆円で、上場予定日は12月19日。IPO株の募集期間中には、IPO株購入のための換金売りも当然出るでしょう。商いが集中する上場日には、短期資金がソフトバンクに向かうでしょう。東証マザーズ市場が誕生してから、これほど大きなIPOはなかったですし、年末12月にこれほど大きなIPOがぶつけられたこともありません。前例が全くないわけです。このIPOが新興株市場にとって吉と出るか、況と出るか…先のことはわかりませんが、ソフトバンクのIPOに大量の個人マネーが向かうことだけは確実。これ自体は、上場日の「12月19日(水)」に向けた新興株にとってネガティブ要因です。年末ラリーに期待するとしても、その後からと見ておくのが無難でしょう。