2000年に初代MS登場。日本仕様に自社開発

 初代マーケットスピードがリリースされたのは、2000年5月でした。その背景には「プロの投資家が使用していたトレーディングツールを個人投資家へ届けたい」という強い思いがありました。

 もう20年前以上昔の1996年、金融ビッグバンと呼ばれた大規模な金融制度改革が実施され、その流れの中で楽天証券の前身、DLJディレクトSFG証券を始めとするインターネット証券が誕生しました。その時代を楽天証券の社長・楠雄治はこう振り返ります。

「日本人向きにカスタマイズする必要があった」 楽天証券 代表取締役社長 楠雄治

「ネット証券誕生の頃は、インターネットのブラウザー上に株価を表示したり、取引をしたりする時代でした。株価をリアルタイムで自動更新する機能はなかったし、ブラウザーの動作も重く一呼吸置くような感じがしたはずで、アクティブにトレードする人には物足りなかったでしょう」

 DLJディレクトSFG証券は、アメリカのDLJディレクト証券会社と日本の住友グループの資本が入った会社でした。ネット証券の先進国・アメリカでは、個人投資家にトレーディングツールが提供されていて、DLJディレクト証券は「マーケットスピード」を売り物にしていました。

「そのツールを日本版に仕立て直すことを考えたのですが、日本人のテイストに合わないことがわかりました。そこでコンセプトだけを引き継いで、ゼロから日本の投資家向けに作ったのが、日本版のマーケットスピードです。アメリカから継承したのは名前だけといえるほど、大きく変わっています」(楠)

 マーケットスピードが引き継いだコンセプトとは、徹底した使いやすさです。画面の階層を深くせず、グローバルメニューとローカルメニューと右クリックだけで画面展開ができるので、誰でもすぐに使いこなすことができます。しかも他社とは違い、「すべて当社の手作りのため、お客さまの声を反映させたバージョンアップも難しくありません」(楠)。

 事実、初代マーケットスピードがリリースされてから18年の間に40回以上のバージョンアップが行われています。

マーケットスピードⅡの注文画面で仕様感を確認

 

今、プロと戦っている個人投資家の声を反映した新機能

 とはいえ18年の間には、トレーディングツールを取り巻く環境も大きく変わり、初代のバージョンアップでは限界もありました。そこで、新しい技術やHFT(高頻度取引)というような最新の注文方式を取り入れたマーケットスピードⅡをリリースすることに。

 全く新しいソフトウェアですが、マーケットスピードに登録した銘柄などの情報の引き継ぎはスムーズだし、使い方もほぼ同じなので、誰でもすぐに使い始めることができます。

「日本のマーケットは、プロ投資家と個人投資家が同じ土俵で戦う先進国ではまれなマーケットです。個人投資家が不利にならないよう、マーケットスピードⅡを開発しました」と楽天証券が胸を張るように、新機能がいろいろと搭載されています。

 それをこれから見ていきましょう。

 マーケットスピードⅡの開発担当者・長谷川拓実によると、改善・強化のポイントは、1.圧倒的な情報量、2.操作性の良さ、3.最新のアルゴ注文の実装です。

「お客さまの声を色濃く反映。体験版への要望も取り入れ改良した」
楽天証券マーケットスピードⅡ開発担当 長谷川拓実

1.圧倒的な情報量ではマルチウインドー対応、一画面に必要な情報を集約、ヒートマップやマルチチャートの追加がメインですが、興味深いのがヒートマップ(画面1)。「この場面を見ると、株価の値動きが色で感覚的に捉えられます」(長谷川)。マルチチャートは「お客さまの声を反映させた機能で、登録銘柄の値動きを一望できます」。

画面1 ヒートマップ

 

2.「操作性・カスタマイズ性も高まりました。注文入力から執行までのステップを少なくしたことで操作性を改善しました」(長谷川)。特徴的な機能として「チャート発注」があります。チャートを表示させてテクニカル分析を行い、ここで発注したいと思ったときに「注文画面を起動させてすぐに発注できたり、発注価格をチャート上にラインで表示し、ラインを動かすことで注文の訂正ができるようになりました」(長谷川)

3.アルゴ注文では、プロの投資家も用いる取引手法が誰でも使えるようになったことがトピックです。これについては次回、じっくり解説します。

 

次回:マーケットスピードⅡが生む新戦略。プロ投資家の思考回路を上回れ