なぜ、小売業は成長産業なのか?
小売業は、かつては内需産業でした。今は、アジアを中心とした海外で収益を拡大する企業が増えています。最高益を更新しつつある小売大手には、以下のような特色を持った企業が多いことがわかります。
【1】製造小売業として成長
利益率の低いナショナルブランド品の販売を減らし、自社で開発したプライベート・ブランド品を増やすことで競争力を高め、売上げ・利益を拡大させてきました。自社ブランド品について、商品開発から生産・在庫管理までやることが多く「製造小売業」とも言われます。最高益を更新中の専門店(ニトリHD、セブン&アイHD)はこの取り組みが進んでいます。百貨店・家電量販店はこの取り組みが遅れています。
【2】海外で成長
内需株であった小売業が、近年はアジアや欧米で売上を拡大し始めています。日本で強いビジネスモデルが、そのまま海外で通用するケースもあります。セブン&アイHD、良品計画などは海外での売上拡大が軌道に乗ってきました。
【3】ネット販売で成長
ネット販売が本格性長期を迎えています。3月決算の小売業で、MonotaRO(3064)、ZOZO(3092)などがネット小売成長企業の代表です。大手スーパーや百貨店でも最近ネット販売を強化する努力を始めていますが、今のところコストに見合う利益を確保できていません。
8月決算でカジュアル衣料品「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(9983)は、これまで国内および海外の有店舗販売を中心に成長してきましたが、ネット販売を次の成長の柱にする方針を表明しています。
【4】インバウンド(訪日外国人観光客の買い物)需要を取り込んで成長
訪日外国人観光客の数が年々、伸びています。大丸・松坂屋が経営統合したJフロント・リテイリング(3086)は、その恩恵もあり、今期、経常最高益を更新することが見込まれます。
来年10月に予定されている消費増税(8%→10%)の影響に注意
成長企業の多い小売セクターですが、来年、悪材料が控えています。2019年10月に消費税引き上げ(8%→10%)が予定されていることです。消費税引き上げ前に、駆け込み需要で消費が増加し、引き上げ後に反動で落ち込む可能性があります。
過去に消費税引き上げ後に、景気が落ち込んだことが多かったので、来年の消費増税にも、警戒が強まっています。消費増税後に、政府は景気対策を打つことを検討していますが、効果がどの程度あるか未知数です。
小売セクターは、増税後に明暗が分かれます。持ち帰りの食品は、軽減税率(消費税を8%据え置き)が適用されますので競争上、優位となります。持ち帰りの食品が多いコンビニエンスストアや、食品スーパーは、相対的に有利です。
外食は持ち帰りの食品を除き、10%へ増税されますので、コンビニとの競争上、不利になります。ただし、節約志向が高まれば、低価格の外食は、高価格の外食に対して、メリットがあるかもしれません。
もっとも、マイナス影響が大きいのは、高価格の耐久消費財を扱う小売業です。百貨店には影響が大きいかもしれません。来年になると、消費増税の影響を考えた銘柄選択が必要になると思われます。
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