「利益確定の売り」は非合理的
今回は、個人が投資についてなんらかのプロフェッショナルな「アドバイザー」を使う場合について考え方を整理したい。投資アドバイザーはFP(ファイナンシャル・プランナー)であることも、対面営業型証券会社のラップ運用、投資顧問会社や、専業の投資アドバイザー、資産運用関係のコンサルタントであることもあるだろう。「直接または間接的に、経済的対価を得て投資についてアドバイスする人(あるいはプログラム)」全般としておく。
投資アドバイザーを使うとして、その正しい選び方、そして賢い使い方について述べてみたい。
投資アドバイザーには3つのビジネスモデルがあり、それぞれに特徴がある。簡単にまとめると、以下の図1のようになる。
1.売買手数料型
まず、アドバイスした運用商品の売買手数料そのものないしはキックバックから収入を得るタイプのアドバイザーが存在し、経済的な規模からすると、このタイプが一番多いだろう。
取り次いだ生命保険に関して生命保険会社からキックバック(保険料の数カ月分から1年分程度であることが多い)を受け取るFPは数多く存在し、証券仲介業の契約をしていて投資信託などの販売手数料の一部を、証券会社からキックバックとしてもらう仕組みのビジネスを営む投資アドバイザーもある。
少し畑違いだが、近年は、マンション投資を紹介して、不動産業者からキックバック(物件代金の1〜3%程度と聞くことが多い)を受けるFPまたはアドバイザーが少なくない。客を紹介するだけで成約時に手にする手数料が高額なので、このビジネスに一度手を染めてしまうと、やめられなくなるアドバイザーが少なくないと聞く。
顧客としては別途相談料などを払う訳ではなく、必要な手数料を支払った中からアドバイザーが得る収入は目に見えないため、手軽に利用しやすい側面がある。しかし、この形の場合、アドバイザーには、
●顧客に頻繁に取引して欲しいと思うインセンティブ(誘因)
●顧客を手数料の大きな商品に投資させたいと思うインセンティブ
上記の2つのインセンティブが働くので、アドバイスの内容がアドバイザーにとって好都合にゆがむ公算が大きいという問題点が広く指摘されている。筆者もこの指摘におおむね賛成であり、一般的な原則として「運用の相談を、あなたが運用商品を売買することによって利益を得る人に依頼することは不適切だ」と述べることが多い。
独立した投資アドバイス業者も対面営業型の証券会社も、さらには投資信託を売る銀行の窓口も、このタイプのビジネスモデルが多いのが現実だ。ただし、この中にも多少の違いがある。独立した投資アドバイス業者の場合、顧客との関係が長いため、対面営業型証券会社や銀行などの人事異動で可能になるような仕組み化された逃げ場がない。
また、証券・銀行の営業担当者の場合、顧客開拓は自分の自由でも、どのような商品を売るかについては多くを会社の方針に従わざるを得ないという「商品選定の不自由」があるが、一方、独立したアドバイザーにはそうした面が少ない点を指摘することができる。
力量のある誠実なアドバイザーであれば(そのような人を投資家が正確に見極められると、筆者は考えていないが)、独立したアドバイザーの方が投資家側にとって不都合な制約が少ないかも知れない。ただし、彼らが顧客の取引を通じて実質的に得ている手数料は個々に把握する必要があろう。
また、保険会社から保険契約仲介に対するキックバックを受け取っているようなFPは、「保険セールス兼業FP」と堂々と名乗って、自らのビジネス上の利害を正しく公表して顧客に相対するべきだろう。「FP」とだけ名乗って、顧客の立場に立つアドバイザーであるという振る舞いは不適切だ。