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 北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement:『NAFTA』)は、米国、カナダ、メキシコの3カ国間の自由貿易協定です。1994年1月に発効され、順次関税が撤廃されました。米国第一主義を唱えるトランプ大統領は、『NAFTA』によって拡大した貿易赤字や雇用減少の改善を目的に再交渉に取り組んでいます。メキシコとは大筋で合意に達しましたが、カナダとの交渉は難航しています。

 

【ポイント1】メキシコとは大筋合意

自動車部品の域内調達率を75%へ引き上げなど

 米国とメキシコの両政府は8月27日、『NAFTA』再交渉を巡り、大筋で合意しました。2国間協議の主な合意内容は、(1)自動車関連部材の「原産地規制」について域内調達率を62.5%から75%へ引き上げ、(2)自動車の40%~45%を時間当たり賃金16ドル以上の労働者によって生産する「賃金条項」の導入、(3)5年毎の協定更新がなければ自動廃止される「サンセット条項」は盛り込まず、6年ごとに見直しを実施、などです。

 

【ポイント2】カナダとは交渉継続

乳製品などで折り合えず

 一方、米国とカナダの『NAFTA』再交渉は、期限としてきた8月31日に合意に至らず、決着を持ち越しました。両国は9月5日に協議を再開し、以降も続ける方針です。

 来年に総選挙を控えたカナダのトルドー首相は弱腰の姿勢は見せず、米国が求める乳製品の市場開放などに安易には応じない構えです。

 トランプ大統領はメキシコとの2国間協定に署名する方針を米議会に通知しました。トランプ大統領は『NAFTA』をやめて、メキシコとの2国間協定に切り替えることもちらつかせながら、カナダに譲歩を迫っています。

 

【今後の展開】3カ国で最終合意できるかが焦点

 今後の米国とカナダの交渉については、引き続き難航しそうで予断を許しません。ただ、メキシコとだけの協定には米議会にも反対意見があります。カナダと米国の経済面での結び付きは強く、例えば自動車産業は国境をまたいでサプライチェーン(部材の供給網)を構築しているため、カナダが抜けると米国企業にも悪影響が及ぶからです。分裂のリスクを抱えるなか、3カ国で最終合意できるかが焦点です。

『NAFTA』再交渉の結果次第で、米国への輸出拠点としてメキシコやカナダに進出している日本の自動車産業もサプライチェーンの見直しなど大幅な戦略の修正を迫られる可能性があります。