人の「評価」なんてサイコロの目のようなもの?

毎月「サイコロ給」を振る。緊張した面持ちの社員さんに「サイコロ給」を実演してもらい、出たのは「4」。思わず「ほっと」した表情に。

「サイコロ給」の話は確かに面白い。話題にもなりました。つまり、周囲からも面白いと言われます。ですが、それだけが目的ではありません。

ーー「サイコロ給」には、柳澤さんが込められたある思いとは?
「仕事をしていく以上、評価というものからは避けて通れないし、評価は大切ですが、本当に面白く働くためには評価には振り回されないほうがいい」

つまり「評価を気にしすぎるな」というメッセージが込められているというわけです。一般企業では上司の査定(という評価)により給料が決まりますが、実は査定なんて曖昧なもの。公平なはずなのに、上司の感情により変わることだってあります。評価は大切だけど、絶対ではない。だから給与だって、サイコロで決まるくらいがちょうどいいというわけなのです。これによって自分達1人1人も面白く働くことを大切にしようというメッセージが込められています。

 

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ーー 面白く働くといっても、普通は好きな仕事だけをえり好みできるわけではありませんよね?
「うちの会社は、いろいろな事業を手がけているものの、組織としては、徹底的に職種を絞っています。社員の9割以上がクリエイターという集団で、ある種偏った組織かもしれません。社員のほとんどがクリエイターなので、比較的、手を挙げた人がやりたいことに配置される仕組みにしてあります。それともうひとつ、さまざまな情報をオープンにしています。仕事が面白くなくなる理由の一つは、自分の知らないところで物事が決まり、いつの間にか作られた仕事を与えられること。でも情報がオープンになっていれば興味が湧くし、自分の仕事と受け止め、主体性が出てきます」

ーー だからといって経営者が一から十までお膳立てをするのも大変ではないですか。

“何でも言っていい感”を出す文化を作ることに徹したいと思っています。つまり物事を言いやすい場を作ることに力を入れているわけです。」上司部下、先輩後輩の枠にとらわれず誰に何を言ってもいいのだから、自分たちが話し合って面白く働ける仕組みをどんどん自分たちで作っていけばいい、というわけです。

 

それって、話題のティール組織ですか?

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「それは言い過ぎ。世の中にはお手本になる企業がたくさんあるから、そういう企業をよく見て研究しました。ティール組織は新しい言葉だし定義も流動的ですが、ティール組織的な、主体的に動く組織を作りたかったのです」 

ビジネスマネジメントの世界では『ティール組織』という次世代型組織が話題になっています。ひと言でいえば自立的に動く組織ということですが、それを先取りしていた? 

ーー とはいえ、理想論だけで、そんなにうまくやれるものでしょうか?
「極めて人間的な感情を否定するつもりはないから、嫌な気持ちになるのも当たり前だよね、みたいな話も全部オープンしているんですよ。聖人君子のようなことばかりをいうのではなく、嫌な気持ちになったら『それは嫌です』というのはあり、と認めています。組織はいろいろな感情が渦巻いているものだから」