通常、景気を良くするために実行される政策として、このような財政政策はもちろん大きな柱の一つです。しかし、直近のトランプ政権の経済政策を見ていると、他にも次から次へと刺激策が打たれていることが分かります。

 第一に、トランプ大統領就任直後から実施されている規制緩和です。とりわけ就任直後に出された大統領令13771によって、各省庁が新たな規制を一つ設けるごとに、二つの既存規制を撤廃しなければならない事になりました。規制緩和によってパイプラインの建設が促進され、評判の悪いオバマケアの規制が一部緩和され、金融規制が実質的に緩和されつつあります。規制の数で言うと、オバマ政権のピークから既に4割削減されてきており、上記大統領令によって、今後もこの傾向は続く見込みです。

 第二に、今、世間を騒がせている通商問題です。もちろん通商問題は悪化しない方が望ましいのですが、米国は定常的に貿易赤字の国。関税等で圧力をかけたところで、経済に与える影響はほとんどないと見られます。むしろ過去三年間、赤字によって、経済成長率は2015年で0.8%、2016年と2017年にそれぞれ0.3%引き下げられており、貿易赤字が減少すれば、それはそのまま、米国の経済成長率を引き上げることになります。

 今は米中貿易戦争として、市場の不透明要因となっていますが、もし将来、何らかの形で決着がつけば、不透明要因の後退と米国の経済成長率上昇によって、ダブルで市場のサポート材料になりえるということです。

 第三に、つい先月、トランプ大統領がメディアとのインタビューで「金利の引き上げは望ましくない」「ドルの上昇は望ましくない」と発言したことです。とりわけ財政政策に力を入れているような時にドルが上昇すると、その効果が国外に逃げてしまうので、なるべく阻止したい、という気持ちは分かります。しかし、一般に他の条件が一定であれば、金利を低くしドルを安くすれば、これらは景気の押し上げ要因になります。

 要するに、トランプ政権としては、昨年末に大税制改革によって財政政策を打ち出したのみでなく、規制緩和によってさらに景気を刺激し、通商交渉を通じて赤字を減らして成長率引き上げを目指し、金利もドルも上げさせない、という、強烈な景気刺激策を打ってきている状況だということです。