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日本企業の3月期決算発表がほぼ終了し、2017年度決算の純利益は25%程度の増益となりました。企業と株主は、『株式価値向上』を共通の課題と認識して取り組んできました。この大幅増益は事業構造の再構築(選択と集中)などの経営努力を積み重ねることによって収益力の底上げが達成されたことも要因とみられます。今後もこうした動きが進めば、さらなる企業の収益力強化につながると期待されます。
【ポイント1】『株式価値向上』は企業と株主の共通の課題
株式市場でも事業の再構築に注目
ここ数年、日本企業はコーポレートガバナンス(企業統治)や経営戦略、財務戦略を通じて、一方、投資家は企業との対話や議決権行使などにより、『株式価値向上』に取り組んできました。これらを受け、海外の企業に比べて慎重と言われていた非中核事業の切り離しなど事業の再構築が増えており、また、株式市場でも、それらの取り組みによって利益率が改善した企業を評価する動きがみられます。
【ポイント2】電機業界などで選択と集中が進む
非中核事業は黒字でも売却
日立製作所は、上場子会社が多く、業務範囲も多岐にわたるため、事業再構築の行方が注目されていました。同社は2016年以降、中核事業と位置づけたソフトウエア会社などを完全子会社化する一方、非中核事業と判断した物流、金融、工具、半導体製造装置等は、業績が好調であっても本体から切り離し、自己資本利益率の改善につなげています。
TDKは、自己資本利益率を高めるため高周波部品事業の一部売却を行う一方、センサー会社の買収や設備投資の拡大によって自動車用センサーやスマートフォン用2次電池の強化を行うなど、事業再構築を進めています。
【今後の展開】『株式価値向上』の取り組みが企業の収益力を一段と強化
従前の事業再構築は、主に不採算事業の売却というケースが多かったのに対して、最近では、非中核事業と判断した場合は十分な利益が出ていても売却する事例が増えており、いわば攻めの事業再構築が広がっています。また、武田薬品工業が過去最大の海外企業の買収を行うなど将来を見通した投資もみられます。
事業の選択と集中をはじめとする『株式価値向上』の取り組みは一段と強まるとみられます。こうした動きが企業の収益力を強化し、日本経済の活性化につながると期待されます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。