はじめに

 今回のアンケート調査は4月23日(月)~4月25日(水)の期間で行われました。4月末の日経平均株価終値は2万2,467円となりました。全月末終値(2万1,454円)からは1,000円を超える値幅で反発し、月足ベースでは3カ月ぶりの上昇に転じました。

 あらためて4月の相場を振り返ってみると、懸念されていた不安(米中の通商問題、米IT企業への風当たり、地政学的情勢など)が後退していくのに伴って、日経平均は月間を通じて上昇基調をたどりました。月末にかけて本格化した国内外の企業決算も、これまでのところ概ね良好なことも支援材料となりました。

 日足チャートを眺めて見ても、日経平均の推移は目立った調整の場面もなく、ほぼ一本調子の軌道を描いていたほか、2万2,000円台や2万3,000円台といった節目や、上値の目安となりやすい移動平均線(200日、25日、75日)を次々と上抜けてきました。こうした値動きによって、1月下旬から3月下旬にかけての下落トレンドが、底打ちから反発になったことがより明確になった印象です。

 今回のアンケートは約2,000名からの回答を頂きましたが、相場ムードの好転を背景に、日経平均および為替の見通しDIがともに前回調査よりも大きく改善し、「株高・円安」の結果となりました。

 

日経平均の見通し

「DIの改善は強気の息吹か、目先の安心感か」

 今回調査の日経平均の見通しですが、1カ月先DIの値が13.35、3カ月先DIについては11.60となりました。前回調査の結果が、それぞれマイナス29.29とマイナス4.42でしたので、マイナスからプラスへと大きく改善した格好です。月間を通じて上昇基調だった株式市場のムード好転が素直に結果に表れたと言えます。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 

 もう少し詳しく見てみます。回答の内訳円グラフでは、1カ月先の強気が30.32%、弱気が16.97%、中立が52.71%となっています。前回の内訳(強気16.73%、弱気46.02%、中立37.25%)と比べると、強気派が増えて弱気派が減少したわけですが、半数以上が中立派となっているため、まだ様子見や警戒感が残っている可能性があり、DIの改善が示すほど先行きを楽観視していないのかもしれません。

 確かに、4月の日経平均は順調に上昇してきましたが、株価のトレンドとしては、1月下旬から始まった下落トレンドが3月下旬でひとまず底打ちし、戻りを試している最中にあります。具体的には、4月末の日経平均終値(2万2,467円)は、1月23日の高値(2万4,129円)と3月26日の安値(2万347円)の下げ幅の「半値戻し」をちょっと超えた水準です。このまま戻りをトライするのであれば、全値戻しまでのあいだに、3分の2戻し(2万2,868円)や節目の2万3,000円などの関門が控えています。

 また、4月の日経平均上昇を後押ししたのは、下落トレンド時の材料となっていた、米国金利の上昇による「適温相場」の揺らぎや、トランプ米大統領の保護主義的な経済政策スタンスを受けて過熱した通商面での米中のやりとりが招く貿易戦争への懸念、フェイスブックやアマゾンといった米IT企業への圧力と規制強化への警戒などの不安が後退したことが大きいと言えます。さらに、決算シーズン入りした国内外の企業業績についても、全体的に安心材料となっているほか、需給面でも、1月第2週より11週連続で売り越してきた外国人が買いに転じたことも相場の支えとなりました。

 ただ、やや意地悪な見方をすれば、「不安材料の後退をはじめ、業績面や需給面の支援材料がありながら、株価はまだ下げ幅の半分を取り戻しただけ」と捉えることもできます。もちろん、今のところ後退している不安材料は完全に払拭されているわけではなく、再び相場の下げ要因として蒸し返される展開もあり得ます。気が抜けない点を考慮すれば、流石にこうした見方はネガティブ過ぎるかもしれませんが、少なくとも、足元の状況だけで下げ幅の全てを取り戻すことはできても、そこからさらに上値を伸ばしていくには、相場のムードがよほど強気になるか、新たな材料が必要となってきます。

足元のDI改善はまだ強気相場への息吹と呼べる段階には至らず、とりあえず目先の安心感を示しているのかもしれません。弱気になるほど悲観的ではないものの、しばらくは、「どこまで株価水準を戻せるか?」、「そこから先の買い材料待ち」の展開が続くのかもしれません。

 

為替DI:円安見通し急増の理由とは?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル円、ユーロ円、豪ドル円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円の先安」見通し、マイナスの時は「円の先高」見通しを意味します。プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強まっていることを示しています。

 1カ月先のドル/円は、4月末の水準(109.30円)よりも「円安になる」と答えた投資家が最も多く、全体の約46%を占めました。一方、「円高になる」と考える投資家は、先月の過半数超えから約25.5%の少数派に転落。残りの約28.5%は、「動かない(わからない)」という回答でした。[図-1]

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 円安見通しから円高見通しを差し引いたドル円のDIは、前月の▲26.11から+20.68へ。たった1カ月のうちにマイナスからプラスへ46.8ポイントも大きくスウィングしました。[図-2]

 悲壮感が漂っていた先月から一転して楽観的円安ムードに切り替わった理由のひとつには、ドル/円が109円を超えたことがあります。109円という水準は今年の高値(113.37円)と安値(104.61円)のちょうど中間点(半値)にあたり、ドル/円がここまで回復したことが、円安論者を大いに勇気づけました。米国と北朝鮮の対話の道が開けたこともドル/円の支援材料になりました。

 一方で、ある変化もありました。

 昨年後半から、FRB(米連邦準備理事会)に続けとばかりに、気合いを入れて金融政策正常化の道を走っていたECB(欧州中央銀行)とBOE(英中央銀行)が、ここにきて急に失速したのです。最近の経済データが両中央銀行にとって期待外れだったことが理由ですが、ユーロ/ドルもポンド/ドルも、今年1月からの上昇分のほぼ全てを吐き出してしまいました。

 ドルの経済環境が劇的に好転しているわけではありませんが、それでも米長期金利は4年ぶりの3%台にのせ、FRBの利上げは今年少なくともあと2回の方針を維持、3回の可能性も残しています。ユーロとポンドが自滅したことで、結果としてドル独り勝ちの状態となったのです。

 とはいえ、先月から今月にかけてのDIの円安方向への急激なスウィングには、サプライズも多分にあったと思われます。ドルの良い材料(とユーロやポンドの悪い材料)が、すでに織り込まれているとすれば、DIの数値は多少割り引いて考える必要がありそうです。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 

今後、投資してみたい金融商品・今後、投資してみたい国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している設問「今後注目する投資分野」で、「国内株式」と回答したお客様の割合に注目しました。

 先月(2018年4月)のアンケート調査では、アンケート回答者全体の67.22%のお客様が「国内株式」を選択されました。

 前月比プラス3.68%と、回答者の割合が比較的大きく上昇したのは、決算が相次ぐ時期となり、好業績が見込まれる企業への投資を想定する動きがあったためだと考えられます。

図:「今後注目する投資分野」で、「国内株式」と回答したお客様の割合

 

出所:楽天DIのデータより筆者作成

 また、上記の通り、2009年以降の推移を見てみると、60%から65%がおおむね底、75%以上が天井のように見えます。このように考えれば、67.22%という4月の結果は、大局的な流れの中では高い値ではありません。

 しかし今後、国内企業の好業績とそれに伴う株価上昇、そして各所に漂うさまざまなリスクへの懸念が遠のけば、国内株式への投資意欲が増し、「今後注目する投資分野」で「国内株式」を選択するお客様の割合は徐々に上昇すると考えられます。

表:今後、投資してみたい金融商品 2018年4月調査時点 (複数回答可)

投資対象 割合 前回比
国内株式 67.22% △ 3.68%
外国株式 29.82% △ 1.02%
投資信託 34.99% ▼ 0.75%
ETF 16.52% ▼ 3.59%
REIT 9.44% ▼ 0.08%
国内債券 5.12% ▼ 0.78%
海外債券 6.68% △ 0.05%
FX(外国為替証拠金取引) 10.04% △ 0.00%
15.36% △ 1.08%
原油 3.26% △ 0.68%
その他の商品(コモディティ) 2.51% △ 0.51%
カバードワラント 1.00% ▼ 0.13%
特になし 7.53% ▼ 0.47%

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2018年4月調査時点 (複数回答可)

国名 割合 前回比
日本 50.35% △ 6.96%
アメリカ 38.91% △ 3.86%
ユーロ圏 6.53% ▼ 0.41%
オセアニア 5.47% ▼ 0.43%
中国 11.50% △ 0.25%
ブラジル 4.77% ▼ 0.13%
ロシア 2.91% ▼ 0.26%
インド 33.53% △ 0.52%
東南アジア 26.96% △ 2.78%
中南米(ブラジル除く) 3.16% △ 0.51%
東欧 1.91% ▼ 0.58%
アフリカ 7.38% △ 0.52%
特になし 8.84% ▼ 2.89%

出所:楽天DIのデータより筆者作成

 

今月の質問:「動画コンテンツ」について

トウシル 編集チーム

 今月のアンケートのテーマは「動画コンテンツ」です。

 トウシルで「動画でわかる投資とマーケット」特集がはじまりました。そこで、今回は、個人投資家のみなさんに「動画」についてアンケートをしてみました。

[今月の質問 1 ] 投資情報は、レポートと動画どちらがいいですか

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「動画」「両方」「どちらでも」をあわせると約57%という結果でした。多くの方が、動画についてポジティブな印象であることが分かりました。

 [今月の質問 2 ] 動画で見たいと思う分野はどれでしょうか※複数回答可

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「株」「投資信託」に集中しました。取引が多いものと相関がある結果となりました。

[今月の質問 3 ]  動画で見たいと思う内容はどれでしょうか

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「今後の見通し」や「投資テクニック」が全体の6割と多数。ほかにフリーアンケートで「企業分析」「楽天証券毎年恒例の講演会」「仮想通貨」が見たいというコメントをいただきました。

「トウシル」では、毎週動画を配信予定です。DIのアンケート結果や記事下のアンケートの声を参考にしていきますので、楽しみにしていてください。