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 米政府は、1月12日にイランに対して経済制裁の解除を継続すると同時に核合意の修正を要求しました。新たな合意が見込めない場合は、核合意から撤退すると表明しています。米政権の『イラン制裁』の解除措置を延長するかどうかについての議会報告期限は5月12日となっています。『イラン制裁』は新たな局面を迎えており、制裁が再度強化されれば、原油価格の上振れ要因となる可能性があります。

 

【ポイント1】『イラン制裁』と解除の流れ

2016年1月にイランの核合意の履行を確認し、経済制裁を解除

 イランの核開発疑惑が2002年に発覚した後、2003年に欧米諸国とイランはウラン濃縮活動の一時停止で合意しました。しかし、2006年にイランはウラン濃縮を再開し、国連安全保障理事会(安保理)が4回にわたって経済制裁決議を採択したものの、イランは濃縮活動を継続しました。これに対して、米国は2012年にイラン原油制裁案を発効させ、欧州連合(EU)も同年イラン産原油の禁輸を実施しました。その結果、イラン経済は困窮することとなり、2015年7月、イランと欧米中6カ国は核問題の解決を目指して「包括的共同作業計画」で合意しました。2016年1月に国際原子力機関(IAEA)はイランの核合意の履行を確認し、安保理は『イラン制裁』を解除、米国・EUも核関連の独自制裁をそれぞれ適用停止・解除しました。

 

【ポイント2】議会報告の期限は5月12日

米国の『イラン制裁』の方針を見極め

 トランプ大統領は就任前から繰り返しイランとの核合意破棄を主張してきました。2018年1月12日に、米国は現時点で核合意を維持するものの、国際査察官の即時査察やミサイル開発・実験も制裁の対象とするなど、イランに対して核合意の修正を求めています。新たな合意の達成が見込めないと判断した場合は即座に核合意から撤退すると表明しています。米政権の『イラン制裁』の解除措置を延長するかどうかについての議会報告期限(120日ごと)は、5月12日となっています。

 

【今後の展開】原油価格は一時的に上振れる可能性も

 今回米政府が提示した核合意再交渉の条件はイランにとって厳しく、イランが再交渉に応じる可能性は低いと見られます。トランプ大統領にとっては、条件を示したにも拘らずイランが再交渉に応じなかったとして、制裁を再開する口実になると思われることから、『イラン制裁』が再度強化されやすい状況にあると考えられます。

『イラン制裁』が再度強化された場合は、原油供給量が日量100万バレル前後減少する可能性があります。サウジアラビアや米シェールオイルの増産などで補うことは可能と思われますが、一時的に原油価格はWTIで見て70米ドル/バレルを上回る場面もありそうです。また、原油価格が高止まる中で、月次のインフレ指標がなんらかの要因で上振れれば、長期金利が上昇しやすい環境となることも想定され、注意が必要です。