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 2018年3月20日~21日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、0.25%の利上げが決定されました。今回の『FOMC議事要旨』によれば、トランプ政権による財政支出拡大を受け経済見通しに対する自信が強まったこと、金融環境が依然として緩和的であることが、利上げの理由となったようです。今後は、中期的な利上げの速度が速まる可能性が示唆される一方、通商摩擦の強まりがリスクとして挙げられました。

 

【ポイント1】経済見通しに対する確信度が強まる

金融環境は依然、緩和的

 公表された『FOMC議事要旨』によれば、全ての参加者が「ここ数カ月の間に米国経済の見通しは強まった」と評価しました。金融環境が引き続き緩和的なうえ、「税制改革法」(減税)や連邦政府の歳出上限引き上げといった拡張的な財政政策の効果も見込まれるためです。

 インフレについては、参加者の大半が、「経済見通しの上方修正に加え、最近のインフレの緩やかな加速を踏まえると、FOMCの目標である
+2%に向かって緩やかに上昇する可能性は高まった」と述べました。

 

【ポイント2】財政支出の経済効果は不確実

通商摩擦の激化は経済の下振れリスク

 

 財政支出の拡大による景気押し上げ効果の大きさや、効果が表れる時期については、「景気の拡大局面で拡張的な財政政策が採られた例が過去ほとんどないため、不確実性が大きい」と判断しました。

 一方、通商問題に関しては、鉄鋼、アルミ二ウムへの関税自体が景気の見通しに大きな影響を及ぼすわけではないものの、他国の報復措置や通商政策を巡る不確実性が景気のリスクになるとの懸念が表明されました。

 

【今後の展開】中期的には利上げの速度が速まる可能性も示唆

 以上のような景気、インフレの評価に加え、金融環境が依然として緩和的との判断をもとに、利上げを決定しました。今回の議事要旨によれば、多くの参加者による経済見通しの上方修正や、インフレの目標値実現に対する確信の強まりなどを踏まえると、中期的な政策金利の上昇軌道は、従来よりも少し急になる可能性も考慮されているようです。

『FOMC議事要旨』が公表された4月11日の米国市場では、株価が下落、債券価格は上昇(債券利回りは低下)しました。今回の議事要旨では、今後の利上げ速度が従来の想定よりも速まる可能性が示されましたが、市場ではトランプ大統領が対シリア軍事攻撃の可能性を示唆したことに、より強く反応したもようです。