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『全人代』とは、“全国人民代表大会”の略称で、中国における国会に相当します。年に1度、地方の代表らがその年の政府の施政方針を示す政府活動報告や予算案などを審議、承認します。今年は3月5日~20日に開催されました。会期は例年10日間程度ですが、今年は16日間と異例の長期間となりました。憲法改正により、習近平国家主席の長期政権が可能となり、王岐山氏が国家副主席となるなど政治面が注目されました。

 

【ポイント1】国家主席の任期撤廃、習主席はこれまでにない長期政権へ

王岐山氏は国家副主席に、外交での手腕が期待される

 今年の『全人代』で最も注目されたのは、国家主席の任期(2期10年)を撤廃する憲法改正です。この憲法改正により、習主席は2期目が終わる2023年以降も続投が可能となりました。習主席はこれまでにない長期政権となることが予想されます。

 習主席を支える人事も注目されました。習主席の右腕と言われる王岐山氏は、昨秋、最高指導部から退いたにもかかわらず、『全人代』で国家副主席となりました。王氏は米国と独自のパイプを持つと言われ、米中貿易摩擦への対応などを担う模様です。

 また、経済運営面では、習主席と近い劉鶴氏が副首相に就任し、かじ取りを行います。経済政策は首相が担当してきましたが、習政権では李克強首相の影が薄くなっています。また、中国人民銀行総裁には劉副首相と親交が深いと言われる易綱人民銀行副総裁が就任します。

 このように、今回の『全人代』では、国家主席の任期と人事の二つの点で、強い政権を長期にわたって続けることができるよう、習主席が足場をしっかりと固めたと考えられます。

 

【ポイント2】成長目標やインフレ目標は前年同様

財政赤字は縮小も積極的な財政政策が続く

 

 今年の『全人代』では、2018年の経済成長率は+6.5%前後、インフレ率は+3%前後、都市部新規雇用者数は1,100万人等と概ね昨年同様の目標が示されました。一方、財政赤字は対GDP比で2.6%と、昨年目標の同3%と比べ縮小されました。ただし、これは景気の底堅さから歳入が上振れしやすく、財政赤字のGDP比が小さくなると見込んだためで、積極的な財政政策の方針は不変との説明がありました。

 

【今後の展開】改革開放から40年、強い指導力で産業の高度化を進めよう

 今年は1978年の改革開放から40年の節目となる年です。習主席はこれまで経済や社会の持続的で健全な発展促進を掲げ、ビックデータやAI等の研究開発強化を推進してきました。今『全人代』で更に足場を固めたため、引き続き、ITサービスなど高付加価値産業の育成を進めていくと見込まれます。