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 幼少の頃に親に連れられて米国に移り、そのまま暮らす不法移民を「ドリーマー」と呼びます。これまで、DACA(不法子女救済措置:Deferred Action for Childhood Arrival)という暫定救済措置により、犯罪歴がないなど一定の要件を満たせば「ドリーマー」も社会の一員として米国にとどまることが認められていました。トランプ政権はDACAの撤廃を求めていましたが、米連邦最高裁判所は18年2月26日に上訴を棄却しました。

 

【ポイント1】DACAは幼いころ親と米国に不法入国した「ドリーマー」救済措置

米国人の雇用を守るため、トランプ大統領はDACAを撤廃へ

 幼少の頃に親に連れられて米国に移り、そのまま暮らす不法移民を「ドリーマー」と呼びます。これまで、オバマ前大統領時の12年2月に導入された、DACA(ダカ)という暫定救済措置により、07年以前に16歳未満で米国に不法入国し、犯罪歴がないなど一定の要件を満たせば「ドリーマー」も社会の一員として米国にとどまることが認められています。現在およそ80万人の若者が、DACAにより就労資格を得ていると言われ、ハイテクや金融等、幅広い業界で雇用されています。

 ところが、トランプ政権は、不法移民から米国人の雇用を守るため、17年9月に大統領令によって定められたDACAの撤廃を発表しました。従来は2年ごとに更新が可能でしたが、18年3月5日以降は更新を認めないとしたのです。同時に議会に対して、代替の法案を出すよう求めています。

 

【ポイント2】米国の裁判所はDACA撤廃を認可せず

DACA撤廃は恣意的で、必然性に欠けると判断

 

 これに対して、カリフォルニア州の連邦地方裁判所は、18年1月にDACA撤廃を全米で一時的に差し止める命令を出しました。カリフォルニア大学など原告側の、「撤廃は恣意的で必然性に欠け、全米に被害の範囲が広がる」との主張を認めたのです。

 速やかな制度撤廃を求めるトランプ政権側は、控訴裁判所を通り越し、最高裁判所に上訴しましたが、最高裁は政権側の請求を棄却しました。

 

【今後の展開】『DACA延長』により18年度歳出法の成立が遅れる可能性も

 カリフォルニア州の連邦地裁による一時差し止め命令は効力が全米に及ぶため、議会での対応等が続く間はDACAは有効です。これで、3月5日が期限だった「ドリーマー」の強制送還や、3月末が期限のDACA代替法の整備に時間的な余裕が生じました。

 議会では、18年度(17年10月~18年9月)予算の協議が行われています。ただし、民主党が『DACA延長』にこだわれば、共和党との合意が難しくなり、18年度予算の成立に遅れが生じる可能性もあります。