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ドイツでは、昨年9月に総選挙が実施され、与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が議席を大きく減らしつつも第一党の座を守りました。しかし、その後の連立協議が難航し、総選挙から約5カ月を経て、ようやく『大連立政権』の発足が決まりました。これによりドイツ政治が安定し、ひいてはユーロ圏の改革や統合の深化が期待されますが、極右・ドイツのための選択肢(AfD)の台頭には引き続き注意が必要です。
【ポイント1】総選挙では、CDU/CSUとSPDが辛くも第一党と第二党に
当初の自由民主党と緑の党との連立交渉は決裂、再びSPDとの大連立の道へ
ドイツでは、昨年9月に総選挙が実施されました。メルケル首相率いる与党のCDU/CSUと、総選挙前まで連立を組んでいたドイツ社会民主党(SPD)は、ともに議席を大きく減らしつつも、それぞれ第一党、第二党の座を守りました。
SPDが連立解消の意向を示したことから、CDU/CSUは自由民主党と緑の党との間で連立協議を始めましたが、この交渉は決裂し、一時は再選挙の可能性も報じられました。その後、それまで連立協議に応じない姿勢を示していたSPDが、大統領の仲介を受けて連立協議の開始で合意し、今年1月に開かれたSPDの臨時党大会で、『大連立政権』の継続に向けた連立協議入りが賛成多数で承認されました。
【ポイント2】SPDとの『大連立政権』発足へ
財務相や外務相といった主要ポストはSPDに譲られた
4日に公表された、SPDの連立合意の是非を問う党員投票の結果は賛成が66%となり、メルケル首相はようやく『大連立政権』の発足に漕ぎ着けました。ただし、今回の『大連立政権』の協議を通じて、財務相や外務相といった主要ポストをSPDに譲ったことにより、CDU党内ではメルケル首相に逆風が吹いています。
党内の求心力を高めるため、メルケル首相はCDUの新幹事長にメルケル首相の後継候補と目されるクランプカレンバウアー氏を指名しました。また閣僚人事では、党内で上がる世代交代を求める声に応えるために、若手が起用される見込みです。
【今後の展開】ユーロ圏の改革や統合の深化が期待される一方、右傾化には注意
メルケル首相が辛くも4期目をスタートさせられる見通しとなったことで、5カ月超の空白となったドイツ政治が安定するだけでなく、欧州全体で見た場合でも、フランスのマクロン大統領が掲げるユーロ圏の改革や統合の深化といった「ドイツの欧州化」が進展することが期待されます。ただ、CDUやSPDの支持が低下する中で、昨年の総選挙で第三党に躍進した極右政党のAfDの支持がさらに上昇するなど、世論の右傾化のリスクには注意が必要です。