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今回の世界株安が「パニック安」ではない理由
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今回の世界株安が「パニック安」ではない理由

2018/2/8
・世界株安、米長期金利上昇……為替の動きは?
・FRB議長が交代する時期に米株は動揺しやすい
・トランプ米大統領の一般教書演説がもたらすもの
・「America」と「together」
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世界株安、米長期金利上昇……為替の動きは? 

 先週1月31日に発表されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の声明文で、FRB(米連邦準備制度理事会)は物価について「今年は上がる」と見通しを上方修正しました。加えて2月2日に発表された米雇用統計の1月の賃金上昇率が前年比+2.9%と2009年6月以来の大幅な伸びとなり、前月12月分も2.5%から2.7%へ上方修正されました。

 このことを受けてインフレ警戒感が強まり、米長期金利は上昇。一時4年振りの2.85%台をつけ、米国株は下落。9年2カ月振り、過去6番目の大幅な下げ(▲665.75ドル)となりました。

 ドル/円は、強い賃金上昇から110円台半ばまで上昇した後は、この株安を受けて110円を挟んだ動きとなりましたが、前週までの108円台前半の水準と比べると底堅い動きをしました。

 そして翌週5日の米国株も大幅安となり、一時1,500ドルを超える下落。しかし、米長期金利はこの株安を受けて、安全資産買いから逆に2.7%台へと低下。ドル/円は株安から109円台を割りましたが、前週(1月29日~2月2日)の108円台前半より円高は進んでいない状況です。どうやらドル/円は株安ショックを徐々に吸収し始めているような印象があります。

 また、米長期金利の低下を見ていると、パニックの「米国売り」ではないことがわかります。「米国売り」とは、株安、債券安(金利高)、ドル安のトリプル安のことです。今回起こった米長期金利の上昇と株安は、相場の大きな転換点だと見る人もいますが、一方で、米国景気の力強さが背景となって起こったため、かなりのスピードで年始から上げ過ぎた株の一時的な調整であり、市場が落ち着けば、株は再び上昇するとの見方も聞こえてきます。

 

FRB議長が交代する時期に米株は動揺しやすい

 もし、今回の動きが株価上昇過程の中での一時的な調整局面と見れば、株安に影響されたドル/円も、早晩「ある要因の中長期の動きを左右する」ために動き出すというシナリオを想定することができます。この中長期の要因とは、連載の前回で挙げた日米欧の金融政策であり、米中間選挙を意識した米国の通商問題です。

 欧米はすでに金融引き締め方向へと政策転換し始めていますが、今回の株安を受けて、この動きには慎重にならざるをえないというシナリオが浮上してきました。

 米国の利上げペースも、年内3回から、4回へと強気の見方も出ていましたが、「金利上昇ペースが速ければ米株が急落する」と学習したため、利上げペースは慎重にならざるをえない可能性もあります。

 余談ですが、「FRB議長が交代する時期に米株は動揺しやすい」という見方があります。ボルカー議長からグリーンスパン議長に交代したときにも株安となったことがあります。

 FRB議長の交代は、金融政策に影響を与えるのではないかという不安が覆うからかもしれません。FRBスタッフも、FOMC理事メンバーもこれは承知のはずです。実際に起こった今回の株急落を見て、FRBは利上げについてより慎重になるのでしょうか。今後のFRB理事からの講演や発言に注目です。従来よりもハト派的な発言が出てくれば、株価支援材料になります。

 また、日銀については、そもそもマーケット参加者の勝手解釈で出口への思惑が強まっただけのため、この思惑は後退することが予想されます。つまり、日銀の出口への期待という円高材料が後退することになります。同時に、日銀当局も出口戦略への一歩はより慎重になることが予想されます。

 

トランプ米大統領の一般教書演説がもたらすもの

 それでは、通商面での為替材料はどうでしょうか。1月30日にトランプ米大統領は一般教書の演説(※)を行いました。その演説で通商政策についてどのように触れるかを世界中の投資家は注目していました。

 

※一般教書演説(”State of the Union address”)とは、米大統領が就任2年目以降、合衆国憲法に基づき、連邦議会に対して国政の現状と今後1年間に進めたい政策を説明する演説のこと。年に1回、1月最後の火曜日に行われるのが慣例。就任1年目に任期4年間の政策方針を表明する「施政方針演説」とは区別される。2017年2月にトランプ大統領が行った演説は「施政方針演説」。 

 初代大統領のジョージ・ワシントンが1790年1月、合衆国憲法2条3項の「大統領は随時、議会に対して国の現状に関する情報を提供」との規定に基づき、最初の演説を行った。その後、演説ではなく、議会に文書を提出する方式が長く続いたが、1900年代前半からは演説方式が定着している。

 

 一般教書では通商政策について以下のように演説しました。
米国の繁栄を犠牲にした不公正な貿易協定を転換する。経済的な敗北の時代は終わった。これからの貿易関係は互恵的で、公平なものになる。悪い貿易条約を破棄し、新しい条件で交渉する。強力な執行により米国の労働者と知的財産を守る。」

 トランプ大統領は通商政策について、「公正で互恵的な貿易」の実現に改めて意欲を示し、不公正な貿易協定の見直しや外国の不公正な慣行へ対抗することに触れましたが、就任早々の貿易戦争も辞さない強硬姿勢は見られませんでした。1時間20分という長い演説の中で、通商政策に言及したのはわずか1分10秒ほどで、就任直後の看板公約だったにもかかわらず、1年経ってトーンダウンしていることには驚きでした。大型税制改革を実施したことから、貿易問題についてはあまり成果を追求していないのかもしれません。

 しかし、トランプ大統領の就任前と就任後の経済実績の成績表を見てみると、実質GDP(国内総生産)は1.5%から2.3%へ、失業率は4.7%から4.1%へ、NYダウは2万ドル弱から2万6,000ドルへとハイパフォーマンスとなっていますが、貿易収支は▲6,797億ドル(2016年1~11月)から▲7,325億ドル(2017年1~11月)と貿易赤字は改善していない状況です。

 対中貿易、対日貿易を見てみると、中国、日本からの統計ベースでは、中国の2017年の対米貿易黒字は過去最高を更新し、前年比10%増の2,758億ドルに膨らんでいます。日本の2017年の対米貿易黒字も3.1%増の7兆円(約645億ドル)と増えています。貿易赤字は改善せず、対中、対日の貿易赤字が増えている状況を、トランプ大統領はこのまま放置しておくのでしょうか。

 足元では、大型減税や一般教書でもぶち上げた1.5兆ドルのインフラ投資が注目されていますが、経済パフォーマンスが昨年のようにパッとしない、あるいはインフラ投資政策が難航すると、やはり、中間選挙を控えていることから、貿易問題に焦点を当ててくるかもしれません。

 一般教書では、1分10秒ほどしか触れていなかったことから、当面は騒ぎ立てることはないと思いますが、要警戒材料として引き続き留意しておく必要はありそうです。

 

“America”と“together”

 ある米国の新聞で一般教書演説について興味深い分析をしていました。歴代大統領の一般教書演説で使われる言葉にそれぞれ特徴があり、当時の世相を反映しているという分析です。トランプ大統領は大統領選挙前から「米国第一主義」(”America first”)を主張し続けていますが、一般教書演説でも”American” “Americans”“America”という言葉が最も頻繁に使われていたようです。

 オバマ大統領のときには“jobs”という言葉がよく使われたそうです。2008年のリーマン・ショックの後を受けて景気が悪化し、失業者があふれたことが影響しているものと思われます。ブッシュ大統領のときは“security”という言葉だそうです。2001年の9.11同時テロ事件が起こったことが影響しているようです。

 トランプ大統領は、演説の中でもうひとつよく使っていた言葉があります。

“together”「一緒に」という言葉です。10回以上連発し、議会の融和を呼びかけています。

 選挙戦では共和党とも対立していたことを考えると大きな変化です。「オバマケア」の撤廃法案で失敗し、税制改革法案でもかなり難航した教訓から、反対勢力を激しく攻撃する従来のスタイルを封印し、与党・共和党内だけでなく野党・民主党との協力を呼びける姿勢をアピールしたようです。一般教書では1.5兆ドルのインフラ投資計画をぶち上げましたが、財源などの具体的なプランには一切触れていません。果たして、中間選挙前に具体的な成果を上げたいという思惑は成功するのでしょうか。今後も注目です。

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