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 インド政府は2月1日、『2018年度(2018年4月~2019年3月)予算案』を発表しました。本予算案では、インフラ投資などを中心に歳出を24兆4千億ルピー(約42兆円)と、前年度比で+10%増やす計画です。2019年前半に予定される総選挙をにらみ、農業・地方経済を重視する内容となりました。また、財政健全化の方向性は堅持しましたが、財政赤字縮小の中期目標(▲3.0%)の達成時期を先送りしました。

 

【ポイント1】2017年度の財政赤字は拡大

2018年度以降は財政再建を重視

 インドの財政収支については、2017年4月~12月の財政赤字の実績値が予算比114%へ拡大していることを受け、2017年度の財政赤字の着地予想は対GDP比▲3.5%と、当初予算の▲3.2%から拡大する見込みとなりました。一方、2018年度の財政赤字のGDP比は▲3.3%に縮小すると見積もられています。続く2019年度は▲3.1%、2020年度に▲3.0%へ縮小する計画になっており、財政再建を重視した内容となっています。ただし、財政収支の中期目標の▲3.0%達成は1年先送りになりました。

 

【ポイント2】農業・地方経済を重視

株式キャピタルゲイン課税を強化

 

 ジャイトリー財務相は『2018年度予算案』の演説の中で、農業と地方経済を重視する姿勢を示しました。2019年前半に総選挙が行われるとみられる現況下、有権者からの支持を更に増やすために、補助金支出は10%を超える伸びとなりました。

 一方で、長期(1年超)保有の株式キャピタルゲイン課税を再び導入すると発表しました。10万ルピーを超える利益に対して10%の税率が適用される内容です。政府は、貧困層への支援を手厚くする分、富裕層には厳しい姿勢を見せています。

 

【今後の展開】株式市場、債券市場は予算案を嫌気、当面神経質な展開

『2018年度予算案』発表後、インド株式市場は政府が打ち出した、株式投資の長期キャピタルゲインへの課税で市場心理が悪化し、大幅に下落しました。また、債券市場も財政収支の2017年度の赤字拡大を受けて、インド準備銀行による金融引き締めを警戒し、大きく下落しました。

 株式市場はこれまで過去最高値を更新し続けてきただけに、キャピタルゲイン課税強化で調整が入りましたが、インド経済は高成長を続けると見られ、早晩落ち着きを取り戻すと思われます。債券市場も大幅に長期金利が上昇したことで、織り込みが進んだと考えられ、金利上昇に歯止めがかかると思われます。