近年、政治が為替を動かす重要な要因となりつつある

 アベノミクス開始以来、ドル/円は政治要因に振り回されるようになっています。ごく大雑把にドル/円に与えた政治要因を振り返ると、次のとおりです。

政治要因に振り回されるドル/円為替レート:2013年1月~2018年1月24日

出所:ISM(全米供給管理協会)
注:楽天証券経済研究所が作成

 

為替は今後、円高・円安どちらへ進むか

 それでは、為替が今後、円高・円安どちらへ進むか、2つのシナリオが考えられます。

●円安シナリオ

FRBが利上げを続ける中、日銀が金融緩和の維持を続けると、日米金利差はさらに拡大します。そこで、円安が進みます。ただし、トランプ米大統領が、円安を非難する発言をし始めると、円安は進みにくくなります。

●円高シナリオ

米景気が減速、FRBは利上げを継続できなくなると、日米金利差がひらかなくなり、円高が進みます。世界の政治不安がどんどん深刻化し、世界的に株安が起こると、「安全資産」として円が買われやすくなります。

 

 私は、世界景気が好調で、世界的な株高が続く間は、円高トレンドが出ることはないと考えています。今、一時的に円高が進んでいますが、次の米利上げが視野に入るころには、円安に戻すと見ています。

 

 将来、世界景気が悪化して、世界的な株安が起こるときに、円高に転じると考えていますが、それは今ではなく、まだかなり先と考えています。

 

トランプ大統領の発言には要注意

 米国から円安を問題視する声が出始めると、円高が進みやすくなるので、要注意です。トランプ大統領は、米国の製造業景況が悪化すると、円安を批判し始めると考えられます。今は米国の製造業の景況が絶好調なので、円安を問題視していません。 

米ISM製造業景況指数:2014年1月~2017年12月

出所:ISM(全米供給管理協会)

 米国の製造業の景況が悪かった2015~2016年、トランプ氏は大統領選挙を戦う中、強く円安を批判していました。ところが、大統領となった後、製造業の景況改善とともに、円安を批判しなくなっています。

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