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 米国では各政権のもとで、その時々の経済・財政状況等に応じた税制改革が図られてきました。税制改革の文脈のなかでトランプ大統領がしばしば言及するレーガン政権期(1981~89年)以降では、概ね共和党政権下で減税、民主党政権下で増税という流れが見て取れます。このような流れの中で、トランプ共和党政権下の2017年12月22日に減税を柱とする『税制改革法』が成立しました。

 

【ポイント1】総額1.46兆ドルの『税制改革法』が成立

当初案に比べ規模を縮小したこと等が早期成立につながったと見られる

■17年12月に成立した『税制改革法』では、総額1.46兆ドルの減税が予定されています。選挙期間中にトランプ大統領が主張してきた4~5兆ドル規模の大型減税からは圧縮され、規模的には歴代政権並みとなりましたが、それでも大方の想定を超える速度で成立にこぎつけた点は評価してよいと思われます。

 

【ポイント2】所得税、法人税の減税が柱

オバマケアの加入義務を撤廃

 

■『税制改革法』の主な内容を見ると、個人については、①所得税の最高税率を39.6%→37.0%へ引き下げ(税率区分は7段階で変わらず)、②子育て減税の拡大(控除額を1,000ドル→2,000ドルに拡大)、③基礎控除の拡大(単身世帯が6,500ドル→1万2,000 ドル、夫婦世帯が1 万3,000 ドル→ 2 万4,000ドル)、④医療保険(いわゆるオバマケア)の加入義務を撤廃、等です(①~③は25年までの時限措置)。

■一方、法人については、⑤法人税率を35%→21%に引き下げ(恒久措置)、⑥設備投資の全額を課税所得から控除する一括償却を5年間認める(従来は50%の償却が認められていた)、等です。

 

【今後の展開】GDPを+0.4%程度押し上げる見通し

■今回の税制改革によるGDPの押し上げ効果を試算すると、+0.4%程度(うち家計による押し上げ分が+0.3%、企業が同じく+0.1%)となりました。18年が+0.2%、19年が同じく+0.2%と、年をまたいで発現する見通しです(弊社試算)。

■今後は、間もなく公表が予定されるインフラ(社会資本)整備投資の内容や実現可能性が注目点となりそうです。ほぼ完全雇用の状態にあるなかでの景気刺激策の効果については、今後、見極めていく必要があると考えられます。