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『地政学リスク』とは、政治的や軍事的、社会的な緊張の高まりが、その地域や世界の社会・経済に悪影響を与えることを指します。2017年の「今年の漢字」に“北”が選ばれたように、今年は弾道ミサイルの発射や核実験の強行によって、北朝鮮の動向に脅威と不安を感じた年でした。また、欧州ではテロが相次ぎ、中東では地域紛争が続いています。

 

【ポイント1】北朝鮮は、日本にとって最も差し迫った『地政学リスク』

今年は度重なるミサイル発射や核実験により、『地政学リスク』が警戒された

■日本で最も差し迫った『地政学リスク』と言えば、北朝鮮をおいて他にはありません。もともと、拉致被害などの問題はありましたが、これに加え昨今の北朝鮮による核やミサイルの開発は日本の平和への大きな脅威となっていると言えます。

■今年はほぼ毎月のように北朝鮮から弾道ミサイルが発射され、9月には6度目の核実験が行われました。北朝鮮の祝日や記念日、米韓合同軍事演習時などには、こうした弾道ミサイル発射や核実験への警戒感が高まったほか、北朝鮮情勢を巡る要人の発言などを巡って、金融市場にも『地政学リスク』を注視する動きが度々見られました。

 

【ポイント2】今年は世界各国でテロが頻発

中東の地域紛争の解決には時間がかかりそう

 

■北朝鮮の他にも、今年は世界各国でテロが多く発生しました。これまでも発生の多かった中東に加え、イギリスやフランスなどの欧州を中心に先進国でも頻繁にテロが発生し、そのたびに『地政学リスク』が意識されました。

■また、中東地域の紛争は依然として続いています。サウジアラビアやイラン、イスラエルなどの国々の関係は複雑で、紛争の平和的解決には時間がかかりそうです。

 

【今後の展開】『地政学リスク』は意識しつつも、景気の良さが評価されるだろう

■金融市場に目を向けると、今年もこうした北朝鮮問題やテロといった『地政学リスク』が度々意識され、株価の下落や円高の進行など、リスクを回避する姿勢が見られました。しかしこうした動きは一時的なものにとどまっています。今のところ、各国の景気や企業業績など、具体的な経済への影響が見られていないためと考えられます。北朝鮮やシリア、イスラエルなどを巡る情勢は未だ解決が見えず、今後も『地政学リスク』が意識される局面はあると思われます。一方で、日米欧を中心に世界同時的に景気回復が見られており、金融市場ではこうしたファンダメンタルズの良さを評価する動きが期待できそうです。