ビットコインの価格回復

 10月に話題となったビットコインの分裂に関する2つの案ですが、最悪のシナリオは回避されました。ビットコインゴールドは11月13日に正式に世に出され、当初は1万3,000円前後で取引されていましたが、21日に3倍近くの高騰を見せました。

 背景には、米国の最大手取引所ビットトレックスでの取り扱い開始や、ビットコインゴールド専用ウォレットの登場があるとみられ、11月26日時点では340米ドル前後で推移しています(coinmarketcapより)。

 また、11月中旬に予定されていたSegwit 2xの分裂は中止されました。Segwit 2xは、ビットコインのネットワークにマイナスの影響をもたらす懸念があったため、この分裂が中止されたことはビットコイン本体にとってひとつのリスクが去る結果となりました。11月26日時点では90万円を突破し、一時99万8,555円の高値をつけ過去最高値を更新しています(フィスコ仮想通貨取引所データ)。

 

大手金融機関によるビットコイン商品提供なども好感

 さらに、ビットコインの価格上昇を後押しするようなニュースが出ています。アメリカのCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)グループが、早ければ12月中旬にビットコイン先物の取り扱いをスタートすると発表。それに合わせて日本でも金融グループがビットコイン先物を扱うと公表しました。

 アメリカでビットコインの先物オプションを提供するLedgerXは、10,000ドルのビットコイン先物オプションを新たなデリバティブとして提供すると発表(現在のビットコイン価格は8,000ドル台を推移)。さらにイギリスの大手ヘッジファンドであるマングループもビットコイン投資を示唆しています。

 

決済手段として広がるビットコイン

 ツイッター創業者のひとりであるジャック・ドーシー氏が立ち上げた決済サービス「Square」は、現金支払いアプリを通じてビットコイン決済のサポートをテストしているという報道もあります。また、世界的な決済サービス「PayPal」も「消費者の需要が増加すれば、時間の経過とともに新しい支払い方法のサポートを検討する」とし、ビットコイン決済を開始することへの可能性を否定していません。このように、金融の世界にも人々の日常にもビットコインの広がりが期待されるようなニュースが続いているのが現状といえます。

 

ビットコインキャッシュの高騰

 一方で、一時ビットコイン価格が不安定な局面が見える出来事も起きました。ビットコイン価格の下落が起きた11月初旬、2017年8月1日にビットコインから分裂したビットコインキャッシュが高騰しました。ビットコインとビットコインキャッシュはマイナーのシェアを競い合う関係にあるため、分裂計画が中断されたSegwit 2xを支持していたマイナーが一時的にビットコインからビットコインキャッシュへとシフトし、ビットコインの下落、ビットコインキャッシュの高騰という現象が起きたのです。

 現在はどちらにも大きな揺れはないものの、香港の投資会社クリプトムーバーの最高経営責任者ギャビン・ヤン氏は、ビットコインキャッシュがビットコインを追い抜く可能性はあると述べています。現在、ビットコインキャッシュは、時価総額約2兆円を超え、3兆円に迫る勢いをみせています。時価総額約15兆円を超えるビットコインとはまだ差があるものの、その成長には注視が必要といえるかもしれません(数字はcoinmarketcapより)。

 

ビットコインのさらなる分裂の可能性

 ビットコインキャッシュの成功を受けてか、現在いくつかビットコインからあらたに分裂しようとしている仮想通貨の計画があります。2018年1月2日頃にビットコインキャッシュプラス(Bitcoin Cash Plus)という仮想通貨がビットコインから新たに分裂することを計画しており、その権利取りとしてビットコイン買いがすでに始まっている可能性もあります。

 加えて、ビットコインダイヤモンド、ビットコインシルバー、スーパービットコインなど多数の分裂案も出てきています。各々の実現性などはまだ不透明ですが、こうした多数の分裂案が今後のビットコイン価格に影響を与える可能性にも注意が必要である状況です。